ページ ページ17
##
「大丈夫！？」
驚いた先生は慌てて彼に駆け寄った。しかし、先生と少年は反対のトラックに居て、近づくのに少し時間がかかる。隣のクラスの走者は驚きながら静かに隣を走り去っていった。
ああ、これは負けたな――私がそう確信した時だった。なんと、少年は顎についた血を手で乱暴に拭いて、立ち上がったのだ。先生は遠くから「大丈夫？ 無理しちゃダメよ！」と声を飛ばしているが、少年はまるで聞こえないふりをする。そして、再び駆け出したのだ。
そう、彼はバトンを落としていなかった。転ぶときにバトンを持った右手を上に上げていたのだ。立ち上がる時には左手を使ったらしい。
他のクラスから大きく後れを取って七人目に渡されたバトン。彼がトラック内に入ってきた時、皆は彼に駆け寄って行った。彼は別に運動会練習に熱心になっていたカースト上位組なわけではなく、むしろ物静かで陰のオーラを発している目立たないタイプの子だった。にもかかわらず、彼はクラスのために大きな貢献をした――私とは違って、根っからの善人じゃないか。
「無理しなくてもよかったのに……ほら、ティッシュ」
「大丈夫？ もしかしなくても痛いよね」
保健の先生もやってきて、手際よくテントの下に連れて行って消毒をしたりした。その道中、彼はカースト上位軍達の「なんで無理したの」という質問に、照れくさそうにはにかんでこう答えていた。
――僕、見た目じゃわかんないかもだけど、このクラスのこと、結構好きだし……僕ひとりのせいで三十人以上が損をするのは嫌だったから。
――それに、勝ちたかったから。
##
毎日更新詐欺申し訳ございませんでした。これからは一週間に一回程度の更新になるかと思います。よろしくお願いします。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
露萩(プロフ) - みきさん» コメントありがとうございます😁💕 その様にご応援いただけて誠に光栄です🙌🏻😭 更新の励みになります💕 (4月29日 11時) (
レス) id: 59536f34c0 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新が待ち遠しい……文才も神ってますね!!夢主様の設定とか諸々好きです💞応援してます!! (4月29日 10時) (レス) id: aa3c92bdc8 (このIDを非表示/違反報告)
露萩(プロフ) - 時雨さん» コメントありがとうございます😁💕 そういう風に言っていただけて光栄です🙌🏻 更新の励みになります💪🏻 (4月7日 14時) (レス) id: b331db759b (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - とても面白かったです！いままで読んできた作品には無いようなキャラとの距離感でこの後の展開が気になって仕方ありません…！更新楽しみにしてます！！ (4月7日 13時) (レス) @page20 id: 301607acc2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
