クリス 温かさはいらない ページ5
「ねえクリス!貴方も一緒にどう?」
なんてコーヒーを差し出すアイツは、俺が黒だなんてこれっぽっちも思っていないような顔で微笑む。
「俺は別に、」
「いいから!十分な暖もとれないんだから、せめて受け取って」
「…」
受け取る際に触れた手は温かくて、どうやってもコイツは俺のものにはならないんだと再認識した。
何度見つめても、アイツは清廉潔白なまま。
俺に振りまいた笑顔のまま、他のやつらにもコーヒーを振る舞うその姿が、どうしようもなくカンに触る。
苛立っている時の思考というのは、関係のないところにまで影響を与えるものだ。
妙に鋭い敵陣営も、考える脳がない馬鹿な味方も、この状況も、全てが煩わしくて。
バシャッ、とコーヒーを床にぶちまけた。
「クリス!」
「おい、なにしてんだ」
「大丈夫!?」
咎める声に混じって、心配そうなアイツの声が聞こえる。
「クリス、口に合わなかった?ごめんね、また淹れなおすから……」
何かと関わってくるアイツに対して、ギリギリとまた苛立ちが募っていく。
そうやって心配そうな顔をして、何を狙っているんだか。
笑顔をぐちゃぐちゃに切り裂いてしまいたい衝動を、暴言と共にかなぐり捨てた。
「触んな!」
アイツの手をはたき落とす。
そして、ハッとした。
今にも泣き出しそうな、その顔。
ああ、駄目だ。
「クリス!」
その言葉ごと、温かさに背を向ける。
俺は一人でやらなきゃいけないんだ。
俺の味方はどこにもいない。
それが今までなら普通だった。
だから、もう。
「俺に温もりを与えないでくれ…!!」
思わず縋ってしまいたくなるから。
一匹狼クリス×市民
エリック 失ったのは退屈な未来→←マイク 愛せないから触れないで
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作者名:sarry | 作成日時:2020年4月22日 16時