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はい、と力強く答えた青年。
その青年の手を、不安げな顔をした少女が握る。
すぐさまそれは返されて、二つの手はギュウッと固く握り直された。

「何があっても、その手離すなよ」

最後に一言、そしてやることあっからとその場を離れた銀時は。


「さて。
さっさと用件済ませて
ローンまで組んじまった、俺の太夫迎えにいかねェとな」






集められた遊女は、遣手と呼ばれる年増の女によって、行く場所やることを振り分けられていった。
しかし、その大凡は張見世として店先に並ばされ、
比較的器量のいい者など極僅かが、決められた客に充てがわれる。


そして遣手はついにAの前に立ち止まる。

「ん……?
お前は彼処の見世の……」

更に閉じた扇子で、くっとAの顎を持ち上げその顔を注視したかと思えば。

「へェ、中々の上玉じゃないか。
末端でも、かき集めてみる甲斐があるもんだね
よし、お前は寝所行きだ。
今日は水揚げ前の生娘を大層好む、太客も来てるからねェ
そのお方についてもらうよ」

そう告げられて、あれよあれよと寝床に入れられて。
ここで客を待つようにとの言いつけを受ける。


「客、アルか……よしっ」


上手いことやって、日輪の居場所を突き止めて、且つそこにたどり着けたら最高。

そうでなくとも、せめて銀時達が来てくれるまでは、怪しまれないようにやり過ごさなければいけない。

でもって今重要なのは、これからの客への対応。

Aは気合を入れ直し、着付けなどの合間に習った遊女の作法を必死に思い返していた。



部屋の外から、僅かに漏れ聞こえた声に、
Aはお辞儀の練習をやめ顔を上げる。

男と、そして案内役と思われる女の声。
耳をすませばその二人分の足音がゆっくり近づいてくる。


「来るアル」

しかし予想は外れ、足音は止まり、
変わりに男のがなる声が上がって。

それもたちまちゴトリ、と何かが倒れたような新たな音に消え、
以降不自然な程静まり返った。

「……?」

そして、迷いなく近づいてくる一つの足音。
Aは思う。
着物を纏う女特有とは違うソレ、
ああそういえば、私はこの足音をいつも待っていたような―――


いよいよ足音の主が近くなった気配がして、Aは慌てて練習通り床に手を付き頭を深く下げる。

何だかんだ緊張しているのだろう、続けて述べるべき口上は頭からすっぽ抜け、後はひたすらこの体制の維持。


遠慮なしに襖が開け放たれた。
すると仄かに届いたのは、血の臭い。

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ぽてうさ(プロフ) - 鈴音さん» 初めまして!お返事遅くなり申し訳ありません(・・;)一作目から読んで下さっていたなんて光栄です、ありがとうございます!コメントを貰えるととても嬉しいです。ただいま6の方を製作中なので、早く公開できるよう頑張りたいと思います(*^^*) (2019年2月5日 8時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音(プロフ) - 初めまして!実はこの作品は一作目から読ませていただいていたのですが、コメントをするのが恐れ多くて今までできていませんでした((((((゜ロ゜;ですが丁度更新再開されたので、コメントさせていただきました。これからも楽しみにしてます!更新頑張ってください!!! (2019年1月12日 22時) (レス) id: 737011c58c (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - なんとか完結できました、お付き合い下さりありがとうございます(;v;)!次回からは文字数的にどこまで入るかによりますが、神威と高杉さんがメインになる展開へ移行していく予定です!また自作もお付き合い頂けたら嬉しいです(*^^*) (2019年1月12日 19時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - lastpinさん» そういって貰えてうれしいです、ありがとうございます(●´ω`●)エピソードだけはポンポン思い浮かんでくるので、上手くお話にできるよう頑張ります! (2019年1月12日 19時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
マカロン - 5巻完結おめでとうございます!次回の6が今から楽しみです!高杉さんの出番が増える事を願って…(笑)。 (2019年1月9日 22時) (レス) id: 245213e437 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽてうさ | 作成日時:2018年6月16日 19時

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