【○魂】逃げた子兎、支配する兎 5【神威】

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「ちょ……っと待つアル！」

神威を見て、銀時達を見て。
慌てたAが声を上げる。

大事な人達を、争わせたくない。

「銀ちゃん、新八。
大丈夫アル、ボロボロのくせに無茶しようとすんなヨ」

そこで待ってて、と二人に伝える。


「神威
私の話、聞いて欲しいヨ」

それから神威と、見つめ合った。


Aは話した、たくさんの友達ができて、
万事屋として働いて、
地球でかけがえのない過ごした日々のことを。

星海坊主が来て、地球に残ることを最終的に認めてもらったことも話した。


「だからネ私、まだ地球にいたいアル。
ずっととは言わない、いずれ神威のところへ帰るって決めてるヨ。
だからもうちょっと……もうちょっとだけ
ここにいることを神威にも認めて欲しいアル」

重なる視線は逸らさない、真摯に真剣に頼み込む。

そんなAの話を、神威は黙って聞いていた。


「……そう」

そして声にしたのはただ一言。

良いとも駄目とも言わず、神威はAから視線を外すとスタスタと歩き出す。
そして屋根縁で立ち止まった。


困惑を滲ませながら、その背中に声をかけようとしたAより早く、神威は再び声を上げた。

「おーい」

屋根の下の地面へ呼びかけるように、心持ち声を張って。

「阿伏兎ー聞こえてるー？
お前には預けてた物があるだろ、くたばるのはさ、それこっちに渡してからにしてよ」

すると少しの間を置いて、ヒュンッと勢い良く風を切る音がする。
何かが下から飛んできて、それを神威が番傘を差すのとは逆の手で受け止めていた。


それを持ったまま振り返り、Aへまた近いてくる。

「よかったね、A。
阿伏兎、まだ一応生きてるみたいだよ」

Aがはっと息を呑む。
そうだ、神威の呼びかけに反応があったということは。

「ホント、ホントに阿伏兎は生きてるアルか……っ」

「うん。コレをここまで投げられるくらいには、元気だってさ。
Aに渡そうって思って、でもこんなとこで会うとは思わなかったから、
阿伏兎に持たせてたんだよね」

コレ、と神威が手に持つのは。
夜兎には馴染み深い 閉じたままの番傘が、もう一つ。

Aは神威の腕から離れた途中から、自らの番傘を差していた。
目の前に立った神威は、その閉じた番傘を渡す。
その代わりに、Aが使っていた番傘を取り上げた。

阿伏兎の無事を喜ぶ間もなく
あ、と取られた傘を目で追いかけて、
その後Aは手元に視線を落とす。

「コレ……私の」

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