【○魂】逃げた子兎、支配する兎 5【神威】

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「離すアル……このままじゃ銀ちゃんが……！
離せェェェェ！！」

もがいてもがいて、それでも神威の拘束からは抜け出せない。
まるで見えない檻に鎖で繋がれているかのように。

Aは叫んで、帯に無理やり挟み込んできた番傘を掴もうと手を伸ばした。

「うーんもしかしてコレが、反抗期ってヤツなのかな」

神威はその手を片手で捕える。
変わらない調子に見えて、Aと向き合うその顔は無表情だった。

「それとも―――アイツのためか」

その間にも、銀時は追い詰められていく。

それを横目に
神威はパッと切り替わって笑顔を見せて。

「最後まで一緒に見られないのは残念だけど、
このまま暴れられると怪我悪化しそうだし
ちょっと眠っててよ」

抑えつけられても、銀時に手を伸ばそうとするAの首裏に加減して手刀を落とす。

「……ガっ」

銀ちゃん、紡いだ名は声にならない。

一瞬の痛みと衝撃の後、
そうしてAの意識は闇に包まれた。


◇

鳳仙の放った蹴りは、これ以上なく深く深く
壁を穿ち
それをまともに受けた銀時は。

埋め込まれた上半身、力なく投げ出された足には真新しい鮮血が流れ、白い着物を染めた。


「泣いてる暇なんてないんじゃないのかい
男が己の命を通した最後の頼み
こいつは聞いてやった方がいいんじゃないのかな」

泣き叫び、膝を追った晴太に神威が変わらぬ笑顔のまま言う。

そうだ母ちゃんを連れて逃げろ、と
行ってくれ、と託された思いを無駄にはできない。
晴太はもう一度立上がり、そして神威を見た。

その腕の中には、意識を失いぐったりと抱えられているAの姿。


「……返せよ。
お前がAちゃんの何なのか知らないけど
Aちゃんは万事屋の一員で、みんなとオイラの大切な家族だ
お前なんかに似合わない！」

涙を拭って晴太が叫ぶ。

「絶対に叶わない相手にも怯まないその反骨精神は大したものだけど
強欲は身を滅ぼすって、知らない？
思い焦がれた母親に会えたんだ、安い家族ごっこはそれで満足しなよ」

神威は表情を変えない。

「手っ取り早く親不孝したいっていうなら、話は別だけど。そうでないなら
あんまりふざけたこと言うなよ―――殺すぞ。

Aに必要なのは、俺だけだ」

ただその声は、凍りつくほど冷たい。

これ以上口を出せば間違いなく殺されると
降り掛かる殺気で理解した晴太は

「……クソッ」

悔しさを吐き出して、Aをもう一度振り返った後。
拳を握り日輪の元へ駆け出した。

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