【○魂】逃げた子兎、支配する兎 5【神威】

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神威の静止も聞かず、まだもがくA。


「あﾞあﾞあﾞあﾞ」

自らを奮い立たせる雄叫びを上げ、鳳仙を押し退けた銀時が反撃に転ずる。

振るった木刀は飛び上がることで躱されて、勢いを殺さぬ鳳仙の蹴りが頭上から落とされた。

ギリギリ跳ねのけて直撃を回避した銀時へ、体制を立て直す暇も与えない追撃が襲う。
振り落とされた番傘は地面を深く抉り、木片がそこらに飛び散った。


「また避けた、頑張るね〜。
ま、地球人の脆い肉体じゃ一撃食らっただけでおじゃんだろうしそりゃ必死か」

戦いを観賞しケラケラと笑う神威を、Aが顔だけで振り返る。

「どうして……神威はそんなに楽しそうにしてられるアルか。
それじゃまるで……」

まるで、正義の味方どころか―――。


「……ああ。
ごめんネ、一つAに嘘をついた。
俺の仕事はさ、世間一般から見たらちょっと
―――大悪党って呼ばれるモノなんだよね」

ついている嘘は、一つどころじゃない。
けれどまた狡い大人の顔を装って、嘘に嘘を重ねた挙句
何でもないように、その中の本当を突き付けた。

Aが信じてきた神威という人物像が、粉々に崩されるような、それを。


「るおあああﾞあﾞ！！」

呆然と神威を見つめていたAは、それでもその声にハッとなり視線を移す。

銀時が鳳仙に飛びかかって、思い切り木刀を振りかぶる。
それが受け止められるとそれを捨て、すかさずもう片方の刀で斬りかかった。

しかし番傘で弾かれせめぎ合う力を、刃先で辿るように受け流し、その空いた顎下を柄で突き上げて。

その打撃に仰け反った鳳仙は、しかし伸ばした手刀一つで、銀時の刀を破壊した。

目の前で砕け散った鉛に目を見開く銀時。

そこへ間髪入れず強烈な蹴り。

得物を取り落とし、咄嗟に行った腕でのガードは意味を成さず、吹き飛んだ銀時は背から壁にぶち当たる。

更に、鳳仙に顔を鷲掴みにされ
頭が打ち付けられて

「うがあﾞあﾞああﾞ」

ひび割れた壁に、めり込んでいく。

「銀ちゃん！！」「銀さん！！」
Aと晴太の悲鳴が重なった。


「もうおしまいかツマンないの……おっと」

Aはこれ以上ないくらいに暴れ出す。
呑気○○たまう神威の腕から抜け出して、銀時を助けにいくため。

「あがァﾞァァﾞ」

夜兎の力からは逃れられず
メキメキと嫌な音を立て銀時の頭からは血が流れ
削りゆく命を示すかのような咆哮が響く。

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