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「っあ、Aちゃ……!」

引き止める声を上げかけた新八を、
Aは振り返り、合わせた視線で止めた。

Aがまた自分を護ろうとしてくれていて、
それを無駄にすることになると分かっていた新八は
口を噤み、無力さを痛感する。


伝わったことを確認して前を向くと、そんなAを見ていた神威と目が合った。

神威は何も言わずグッと握る左手を引き寄せて、近づいたAの身体を抱き上げる。

そして背後で拳を握る新八を気にも留めず、その腕にAを抱えたまま
あっという間に上階へと飛び移って消えていった。





自分と他人の怪我には無頓着な神威も、
Aのことだけはいつでも見過ごさない。

薙刀が貫通した手のひら、既に血は止まっていてもその深い傷はまだ癒えない。
傷口から回る熱とリミッターなしに奮った力も相成ってか腕自体も真紫に腫れ上がっていて。


「阿伏兎のヤツ、こんな怪我負わせてさ
何辺殺しても足りないくらいだよ」

その後に、「ま、もう死んでるんだっけ」と軽く続く神威の言葉。
まるで笑い話のように。

Aにはとても笑えない事実だった。

Aに関する全ての権利は、
この身体を傷つけることさえも唯一己にあるのだ。
神威はそれを傲慢とも驕りとも思わない。


日除けのために持ち歩いてあまり余った包帯で
Aの腕を吊るように固定する。

「これは応急処置。
帰ったらちゃんとした手当するから」

帰る、何気なく告げられたことに肩を揺らすA。
Aを連れ帰ると言うのは、神威の中で迷いようのない必然。


「さて、お待ちかねの鑑賞会へ向おうか」

神威は再びAを抱きかかえて、先を行く。

「神威……」

言いかけたAを遮って、合わせた顔は笑顔のまま。

「大丈夫。
後残りも何もかも、これから全部断ち切れるよ」

Aはハッと気づく。
“見せ物”神威が言うそれは―――。




「おおー、やってるやってる」

「……銀ちゃん!!」

それは、戦い。

連れられた場所、そこでAの予想通り
銀時が鳳仙に立ち向かっていた。


「A!?」

ほんの一瞬、現れたAに気を取られた銀時が鳳仙に蹴り飛ばされる。
咄嗟に木刀を構えた防御もその衝撃を和らげるには足りず、血を吐く銀時。


神威はAを膝に乗せ身体に腕を回し、
鎮座する大きな銅像の上に座り込んだ。

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ぽてうさ(プロフ) - 鈴音さん» 初めまして!お返事遅くなり申し訳ありません(・・;)一作目から読んで下さっていたなんて光栄です、ありがとうございます!コメントを貰えるととても嬉しいです。ただいま6の方を製作中なので、早く公開できるよう頑張りたいと思います(*^^*) (2019年2月5日 8時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音(プロフ) - 初めまして!実はこの作品は一作目から読ませていただいていたのですが、コメントをするのが恐れ多くて今までできていませんでした((((((゜ロ゜;ですが丁度更新再開されたので、コメントさせていただきました。これからも楽しみにしてます!更新頑張ってください!!! (2019年1月12日 22時) (レス) id: 737011c58c (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - なんとか完結できました、お付き合い下さりありがとうございます(;v;)!次回からは文字数的にどこまで入るかによりますが、神威と高杉さんがメインになる展開へ移行していく予定です!また自作もお付き合い頂けたら嬉しいです(*^^*) (2019年1月12日 19時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - lastpinさん» そういって貰えてうれしいです、ありがとうございます(●´ω`●)エピソードだけはポンポン思い浮かんでくるので、上手くお話にできるよう頑張ります! (2019年1月12日 19時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
マカロン - 5巻完結おめでとうございます!次回の6が今から楽しみです!高杉さんの出番が増える事を願って…(笑)。 (2019年1月9日 22時) (レス) id: 245213e437 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽてうさ | 作成日時:2018年6月16日 19時

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