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「嬢ちゃんにはここで選択肢をやろう。
この先はちいと刺激が強すぎるだろうから、コイツが殺されるのを部屋の外で待つか。

それともここで見届けてやるか、二択だ」

さあどうする? 阿伏兎は選択を迫る。
それは、どちらも到底受入れることのできない答え。

「新八を、離すアル……!!」

「そんな選択肢はねェよ。
まァ俺は前者をオススメするがね、それが身のためだと思うぜ」

「……れ、がっ……」

そこで聞こえた声。
阿伏兎が、視線を上に向ける。

新八が、震える手で柄を掴んでいた。
尋常ではない冷汗を垂れ流し、口端からは血がツウと溢れる、そんな中。

「誰、がお前なんかに、殺されて……たまる、かっ!」

お前が死ねと、吐き捨てた。


「……時間切れだ、嬢ちゃん。
ここにいるってんなら、多少の血みどろは覚悟してくれや」


そう告げた阿伏兎は、握り直した柄を強く、強く突き上げていく。


「ガァ……ァ゙ァ゙゙ァァ゙!!」

新八が胃液混じりの吐瀉物をぶちまけた、
鼻から口から血反吐を吐いた。

「……めろ……」


血走った眼球は点滅するかのように激しく揺れる。
柄は今にも臓器を押し潰し、腹を突き破るように食込んで
メキメキと鳴る音は骨を破壊したのだろうか。


「やめろォォォ!!」


このまま、何もできなければ
間違いなく、Aの目の前で新八は死ぬ。

力がなければ。
殺したくないと抑え込んだ力が、なければ。

―――大事な仲間さえ護れない。


ドクンッと身体の中のナニカが騒ぐ。
その瞬間、目の前が真っ赤に染まって。

意識は血の宿命に呑み込まれた。




Aが阿伏兎に飛び掛る。
それも、先程までとは桁違いのスピードで。

反応の余地もないまま、蹴り飛ばされる阿伏兎。

宙に浮かんで体制を立て直すこともできず、続け様に受けた拳に思い切り吹っ飛ぶ。

ぶち当たった壁は大穴空いて、衝撃に口から漏らす血反吐。


解放され地面に崩れ落ちた新八は、激しく咳込みながら視線を上げる。

「Aちゃん……!?」

そこにいるAは
瞳孔までも、極限に見開いた瞳。
薄笑う口元。


手の甲で血を拭った阿伏兎が言う。

「……無意識に夜兎の血を抑え込んでた鎖が
仲間の危機に瀕して理性と共にはじけ飛んだか」

そこにいたのは、獲物を屠る歓びに満ち溢れた

「どうやら目を覚ましたらしい
夜兎(ケモノ)が」

ただ一匹のケモノだった。

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ぽてうさ(プロフ) - 鈴音さん» 初めまして!お返事遅くなり申し訳ありません(・・;)一作目から読んで下さっていたなんて光栄です、ありがとうございます!コメントを貰えるととても嬉しいです。ただいま6の方を製作中なので、早く公開できるよう頑張りたいと思います(*^^*) (2019年2月5日 8時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音(プロフ) - 初めまして!実はこの作品は一作目から読ませていただいていたのですが、コメントをするのが恐れ多くて今までできていませんでした((((((゜ロ゜;ですが丁度更新再開されたので、コメントさせていただきました。これからも楽しみにしてます!更新頑張ってください!!! (2019年1月12日 22時) (レス) id: 737011c58c (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - なんとか完結できました、お付き合い下さりありがとうございます(;v;)!次回からは文字数的にどこまで入るかによりますが、神威と高杉さんがメインになる展開へ移行していく予定です!また自作もお付き合い頂けたら嬉しいです(*^^*) (2019年1月12日 19時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - lastpinさん» そういって貰えてうれしいです、ありがとうございます(●´ω`●)エピソードだけはポンポン思い浮かんでくるので、上手くお話にできるよう頑張ります! (2019年1月12日 19時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
マカロン - 5巻完結おめでとうございます!次回の6が今から楽しみです!高杉さんの出番が増える事を願って…(笑)。 (2019年1月9日 22時) (レス) id: 245213e437 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽてうさ | 作成日時:2018年6月16日 19時

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