検索窓
今日:38 hit、昨日:12 hit、合計:491,319 hit

12 ページ13

「何?もう用は済んだはずだろ。
やっぱり殺されたくなったのあのジイさん。
……あーあ、せっかく良いところだったのに」


そうため息をついて、神威はAの身体を片手で起こす。


「よっと。
じゃあ、ちょっと行ってくるよ」

そう目を合わせた神威が何を求めているかは分かったが、Aに初めて躊躇う気持ちが生まれて“習慣”ができない。

そんなAを引き寄せて、神威はちゅ、と口づける。

「A、行ってきます」

「い、行ってらっしゃいアル」

かろうじてAはそう返す。


神威は立上がって、急いでくれオーラを醸す阿伏兎へ振り向いた。


「終わったらさっさと帰るから
それまでよろしく、阿伏兎。

これはカンだけどAが遊女の真似事なんてしてるのは他人の為だろう。
例えば母に焦がれる子供の為、とかね」

「そりゃさっきのガキと―――」

「だから万一、俺のいない時にAを取り返そうなんてのが現れたらさァ
分かってるよね?」

そこに含められる全ての意味を読み取った、出来の良い部下は。

「……了解」

Aを不憫に思いながら、そう承ったのだった。






『母に焦がれる子供』神威のその発言は晴太を連想させて、何か知っているのかと尋ねようとした時は
神威はひらひらと後ろ手を振って、既に部屋を出ていた。

Aは布団の上に座りこんだまま、混乱覚めやらぬといった様子だ。


「あー……なんだ、うん。久しぶりだな嬢ちゃん」

かける言葉を迷った阿伏兎は、とりあえず今更ながらの挨拶を選ぶ。

「あぶと」

そう呼んで、視線を合わせたAが口を開いた。

「神威は、神威は私の……」

何かを聞こうとして、止める。

「……やっぱり、なんでもないヨ」

「……」


流れる沈黙を経て、今度はAから話しかけた。

「阿伏兎と神威だって、何でここにいるアルか」

「俺達ァ仕事で来てんだ。
……ま、それももうただの名目になっちゃいるが」


「シゴト……じゃあ、神威が言ってた子供って?
晴太がここに来てるアルか」

「晴太?
あのガキンチョ、嬢ちゃんの知り合いかい。
それならアイツ等は」

阿伏兎はふと途中で言葉を止めると、入口に目をやる。
つられてAもそちらを見て、それから足音らしきものを耳に拾う。


この部屋にどんどんと近づいてくる足音、どうら走っているようだ。
そして。


「A!!」 「Aちゃん!!」

思い切り開け放たれた襖、飛び込んできた二人。

13→←11



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (366 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
728人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ぽてうさ(プロフ) - 鈴音さん» 初めまして!お返事遅くなり申し訳ありません(・・;)一作目から読んで下さっていたなんて光栄です、ありがとうございます!コメントを貰えるととても嬉しいです。ただいま6の方を製作中なので、早く公開できるよう頑張りたいと思います(*^^*) (2019年2月5日 8時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音(プロフ) - 初めまして!実はこの作品は一作目から読ませていただいていたのですが、コメントをするのが恐れ多くて今までできていませんでした((((((゜ロ゜;ですが丁度更新再開されたので、コメントさせていただきました。これからも楽しみにしてます!更新頑張ってください!!! (2019年1月12日 22時) (レス) id: 737011c58c (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - なんとか完結できました、お付き合い下さりありがとうございます(;v;)!次回からは文字数的にどこまで入るかによりますが、神威と高杉さんがメインになる展開へ移行していく予定です!また自作もお付き合い頂けたら嬉しいです(*^^*) (2019年1月12日 19時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - lastpinさん» そういって貰えてうれしいです、ありがとうございます(●´ω`●)エピソードだけはポンポン思い浮かんでくるので、上手くお話にできるよう頑張ります! (2019年1月12日 19時) (レス) id: 6e545ade18 (このIDを非表示/違反報告)
マカロン - 5巻完結おめでとうございます!次回の6が今から楽しみです!高杉さんの出番が増える事を願って…(笑)。 (2019年1月9日 22時) (レス) id: 245213e437 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぽてうさ | 作成日時:2018年6月16日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。