【銀魂】逃げた子兎、支配する兎 6【神威】

兎は月夜に舞い降りる ページ49

「銀ちゃん、行ってらっしゃいヨ」

玄関の引き戸に手をかけ、今にも出掛けるところといった銀時は、Aの声に振り返る。

「……やっぱりさァ、行くの辞めっかな。
ほら今日、見たいテレビあったの思い出したしさ」

「テレビは録画すればいいアル、私がやっておくネ」

「いやでもよ、やっぱりリアルタイムで見てこそっていうかなんていうか？
そういうことなんだよ」

「どういうことかさっぱりアル。
もーいいから、銀ちゃんはさっさとただ飯ただ酒行くヨロシ！」

うだうだといってその場を動かない銀時にしびれを切らしたAは、ぐいぐいとその背中を押しやる。

「あちょっとま……A、
家に電話がかかってきても、誰が訪問者が来ても今日はまるっと無視決め込めそれから大人しく家にいろよ間違っても夜遊びなんかしちゃいけません、
これ銀さんとのお約束だかんな分かったな！」

最後まで小うるさい銀時を外へ出して後姿を見送り、Aは玄関の扉を閉める。

「どこの過保護なパピーアルか」

そして呆れつつも、それだけ心配してくれているのだと小さく笑った。


事の発端はこうだ。

銀時が何やら言いたげな顔をしていたからAがどうしたのかと聞けば、

万事屋に不定期に依頼を頼む、半常連のおっさんから久しぶりに依頼を受けたという。

「ただ毎回、詳しい依頼内容は飲みながらでも、っつーおっさんでよ
本人もよく飲むが、それ以上に飲ませたがりだから行けば中々解放されねェんだよな」

そうは言いつつ、飲み食い代は全ておっさん持ちで仕事も入るとあって、これまでの銀時なら迷わず喜んで行っていたはずだった。

けれど、あの吉原の神威との一件の後から、銀時が夜に家を空けることは極端に減った。
Aを１人家に残すことを避けている。

夜、それは夜兎の活動時間。

はっきりと言及しないが、それは迎えに来ると宣言した神威への警戒であり
Aもそれを分かっていた。


ただ、銀時は飲みに行くのが好きなように見えたし実際前まではよく夜に出掛けていたし
Aは自分のことで、これ以上我慢をさせたくなかった。

それに、昨日まで何もなかったのだから、今日だってきっと大丈夫、とそんな希望的観測も頭にあった。

「銀ちゃんたまには行ってくるアル。
私なら大丈夫ヨ、留守番くらいよゆーアル！」

「つっても新八も体調崩して寝込んでるから呼べねェしなァ……」


それでも尚渋る銀時を押し切って。
そして冒頭のように見送ったのだった。

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