九秋審神者、黒本丸を立て直す参 (ページ8)

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第100話ページ8

「まぁそれはいいんだが」

「…いいんですか」

「正直、お前が来る前から少しきな臭いとは思っていたんだ。だが…私も、臆病だった」

居た堪れないというように顔をそらし、息をついた先輩に僕は何も言えなくなる。
そうか…先輩も、気づいていたんだ。
けれどそれは、政府の討伐課第一班班長という重要な役割を持つ彼女が、安易に触れていいものではない。
なのに僕は、彼女にそのパンドラの箱を開けさせてしまったんだ。
下手をすれば職を失うか、最悪の場合、命すらも…

「そんな暗い顔をするな。おかげでようやく、決心がついたんだ。
友を奪った者に、復讐する決心が。
そのためには、例えこの身がどうなっても構わんさ」

僕の頭を撫でつける先輩の表情が苦しいほど優し気で、申し訳なさと同時に、酷く眩しい彼女の姿に憧憬が浮かぶ。
…母様の友人であるこの人を、これ以上傷つけたくないな。

「僕がそのことについて説明するのはわかりました。
でも、どうしてわざわざ…？」

「…昨日、また行方不明者が報告された」

「ッ!?」

神妙な面持ちで声を潜めた先輩に、三日月と共に息を呑む。

椿さん曰く、元々中間審査をしにこの本丸を訪問するのは明日の予定だった。
しかし、昨夜とある本丸から審神者が帰らないとの通報を受け、椿さんが率いる討伐課第一班が調査に入ることになったらしい。
だがこちらの審査を先伸ばす訳にも行かず、急遽本日の早朝に訪問することになり、このあとすぐに発つとのことだった。
…まぁ、盗聴して僕の状態を心配してくれたのも、本当だと思うけど。

「それで時間が無いから、僕に説明を任せると…
あれ？でも、討伐課って戦闘がメインでしたよね。
失踪した審神者の調査に、どうして討伐課が…」

時の政府…別名"歴史修正対策組織"には様々な部門が設けられており、そこからさらに細かく課目毎に分けられている。
椿さんが所属するのは中央軍部の討伐課で、その役目は"新たに時間遡行が行われた時代・地域に赴き、現れた時間遡行軍と直接戦闘してその刀種や装備している刀装、生存値などを観測する"こと。

そこから得た情報を元に"情報総括部"が新たな出陣先としてまとめ、各本丸に触れを出す。
ほかにも常に様々な時代・地域を監視し、歴史改変の情報をいち早く探知する"観測部"や、新たに時間遡行が確認された時代へ一番に赴き、地形や天候、出現する遡行軍の座標などを調査して討伐課に報告する"探索部"などが存在する。