九秋審神者、黒本丸を立て直す参 (ページ7)

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第99話ページ7

──それから僕は、椿さんや三日月の話を聞き、ここに至るまでの経緯を知った。

「それで、みんな納得してくれたんですか？」

「一応な。ついさっきまで大広間に皆を集めて、改めて私から説明しておいた。初期刀やそちらの三日月の説得もあって、ひとまず受け入れるという方向で固まったようだぞ」

「長谷部と薬研は…」

「…彼らも、大人しくしていたよ。
また後で話してみるといい」

何だか含みのある言い方だけど、先輩が教えてくれないなら自分で直接確認するしかない。
この人は大事なことほど、僕自身に采配を委ねてくる。

「ところで…ひとつ、いいか？
我々の初代審神者の失踪について、知っていることを教えてはくれないか。
確か"政府が絡んでいる"と言っておったな？」

三日月が真剣な眼差しで問いかける。
そんなこと言ったのか、椿さん…
二人の様子を黙って見守っていると、先輩は渋面を作って頷いた。

「そうだな、あなたたちには話しておいてもいいだろう。
ただし…それを話すのは、私ではなくこいつだ」

「えっ…ぼ、僕ですか？いやでも、僕詳しいこと何も知らないですよ」

突然先輩に指名され、けれどどうしていいかわからずにワタワタと慌てて身振りする。
確かに、この件に政府が絡んでいるかもと最初に椿さんに言ったのは僕だけれど、結局それは全て僕の憶測だ。

そんな不確かなものを、彼らに情報として話してもいいのだろうかと不安になって先輩を窺うと、彼女は陰りのある瞳で力なく笑った。

「残念だがな、弟子よ。
お前の憶測は、どうやらほぼ真実だ」

「……！」

…時の政府からの尋問を受け、椿さんに身元を引き取られた後、僕は"尋問では話さなかったこと"を、彼女には包み隠さず全て話した。
その内容は「母親は遡行軍に誘拐された審神者で、僕は遡行軍の本丸で生まれ育ったこと」「遡行軍には定期的に審神者が拉致されてきていたこと」そして──

──「たまに遡行軍の本丸に来ていた身なりのいい男が、時の政府にもいたこと」の大まかに三つ。

…そんなこと、信用できない政府の高官になんか、言えるわけがなかった。
なぜ椿さんには話したのかと言われると、長くなるから今は割愛しよう。
そして僕の話を聞いた先輩は、僕に審神者としての訓練をつける傍ら、この件について調べてくれていたのだ。

その人が、認めてしまった。
"審神者誘拐に時の政府が関わっている"という、僕の憶測を。