九秋審神者、黒本丸を立て直す参 (ページ46)

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第138話ページ46

「あーあ。なんだか疲れちゃったなぁ」

わざとらしく声を上げながら、供物台に準備していた資材を戻していく。
僕の方を振り向いた五振りのうち、信濃だけホッとしたように頬を緩め、それ以外は絶望した様子でこちらを凝視していた。

おっふ…これあれだ、鶴丸に霊力あげるって言った時と似た感じだ…これまで言葉選びには気を付けていたけど、ここに来てやっちゃったな。
でも、こういう時の対処法は一つだ。

刺される前に、刺す！

「ねぇ。一旦休憩にするからさ、みんなでお茶しない？
資材も霊力もまだまだ余裕あるけど、嫌がる子を無理矢理押さえつけてやるのは趣味じゃないし…
それに、美味しいお菓子もあるからさ」

そう言って彼らに近づくと、単純に僕が手入れをやめたのではなく、信濃を説得してからやるつもりだということに気づいたのか、皆一様に嬉しそうに頬を上気させて、元気に返事をした。
ただ一振り困惑したままの信濃は、「僕たちお茶を淹れてくるね！」と言う乱に腕を引かれ、ほかの三振りに背を押されて走り去っていった。

元気ダナーと彼らを見送り、それまで黙って静観していた一期一振を見上げた。

「一期も一緒に行こうか。君がいた方が、信濃の緊張もほぐれやすいだろうし」

「…そう、ですな。手間を取らせて申し訳ありません」

「はは、いいってこのくらい。いろいろありすぎて忘れそうだけど、実際のところ僕がここに来てまだ一週間くらいしか経ってないからね…
いくら害のない人間だってわかったところで、すぐに受け入れられるかはまた別だよ」

まだ少し接し方に迷いのある一期と並び、僕が寝起きしている客間へ向かう。
現在長義と三日月はここにおらず、今は一期と二人きりだ。

なぜかというと、先日例の蔵を探し終えた国広達から、成果なしの報告が上がったためである。
蔵には遡行軍との関係をほのめかすものはおろか、呪物の類も一切見つからなかったらしい。
そこで長義と三日月が捜索に加わり、ダブルチェックを行いつつ、ほかの蔵や使われていない納屋などの調査も始めたのだ。

長義も三日月も、僕が一人で手入れを行うことに心配していたけれど…
正直、日ごろから僕のことを"雛"と呼んで猫かわいがりしている三日月のおかげで、余程の命知らずか新入りでもない限り、僕に手を出す刀はいないと思う。

あの刀、極めていないとはいえ練度は上限に達しているし、練度では計れない強烈な強さを秘めているからな…侮れない。