九秋審神者、黒本丸を立て直す参 (ページ45)

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第137話ページ45

──それから、五日後。
未だに膨大すぎる二代目の霊力と和解しきれず、この数日の間は一日五振りを目安に手入れを続けた。

こんなペースじゃ二代目と相違ないんじゃ…と不安に思っていたけれど、みんなはそれを否定し「焦らなくていい」と優しくしてくれた。
なので今はお言葉に甘え、一日五振りずつ傷の深い刀から順番に手入れしている。

さすがに五日も経てばかなり霊力も安定してきたし、もうあとは軽傷の刀しかいない。
そろそろ一日の許容量を増やしてもいいかな、と思ったけど…鬼の形相の長義と猛吹雪を背負う三日月に止められたので、今日も大人しく五振りを手入れ部屋に迎え入れた。

…そういえば一振り、中傷なのに手入れを受けに来てない刀がいたなぁ…彼に近しい刀が「もう少しだけ待ってやってくれ」って言ってたから大人しく待っているけど…
軽傷の刀もすべて手入れし終えたら、様子だけでも見にいこうかな。

とりあえず本日手入れするのは、粟田口から厚、前田、博多、乱、そして信濃の五振りだ。
中傷以上の一期一振や平野らは先日ほかの中傷者と共に手入れしたのだが、念のため一期一振は付き添いとして来ているらしい。
まぁ、手入れ中は外で待っていてもらうけど。

あの結界の一件からみんな協力的になり、依然とは打って変わってスムーズに事が運ぶ。
二代目の霊力を必死にこねくりまわしながら、そこ以外は苦戦することもなくこなしていった。
…はずだったのだが。

「あー…やっぱり、俺はいいや。
軽傷までも行かないし。資材が勿体ないでしょ？」

最後の信濃藤四郎の番になったところで、彼は手入れ部屋の入り口で足を止める。
おや…？と資材を準備していた手を止めてそちらを見やると、すでに手入れを終わらせた信濃の兄弟たちが、ずいっと彼を囲んでいた。

「前ん人とは違うばい。怖がることなかよ？」

「そうそう、大丈夫だって。今度の人は優しかったぜ」

「霊力もすごく温かくて、おまけに頑張ったねってたくさん褒めてくれたんだよ！」

「手入れ中、我々がそばに控えてもいいか、聞いてみましょうか…？」

口々に励まされる信濃を見ていると、なんというか予防接種を受ける兄弟のようにも見えてきたな…
注射を嫌がる末っ子と、それを勇気づける兄たち…
そういう風に見れば微笑ましいけど、軽傷未満とはいえ信濃も傷ついて長い時間が経っている。

これ以上放置するのはよろしくない。