九秋審神者、黒本丸を立て直す参 (ページ44)

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第136話ページ44

あとはまぁ、先に僕と関わっていた伊達組や、織田組の刀の話を聞いたからというのもあるだろうけど。
とにかくいろんな刀から霊力の美しさを褒められて、もみくちゃにされて大変だった…嬉しかったからいいけどね。

で、そのあとは傷が深い刀から順番に手入れをしていったんだけど…ここでも一つ問題が起きた。
それは、二代目の霊力と僕の霊力が上手く噛み合わず、操作や調整に非常に難儀したこと。
そのせいで、本来はごく微量の霊力で済む手入れに、普段の何倍も消耗するはめになってしまった。

黒く淀んで、それでいて不思議と温かい二代目の膨大な霊力を制御するのはとてつもない精神力を必要とし、結局今日は十数振りしか手入れができなかった。
霊力は潤沢にあるはずなのに、その制御に意識が持っていかれすぎて、その結果霊力酔いを起こして無様にも嘔吐してしまったのである。

何と言えばいいのか…車の窓から流れていく景色に忙しなく視線を動かしていたら、車酔いしてしまった時のような…
そんな風に、体内を巡る霊力を注視しすぎたせいで酔った。面目ない。

とまぁ、僕がダウンしてしまったので本日の手入れは取りやめにし、夕飯には和風だしの効いた煮込みうどんを頂いて、今に至る。

ちなみに、先ほど長義が押し入れのハンガーにかけていたスーツは、僕の新しい服だ。
昼間着ていたスーツは、嘔吐した際汚れてしまったので、政府の連絡用ゲートから知り合いにクリーニングに出すようお願いしてもらった。

基本的に手入れ中は、審神者と手入れを受ける刀剣男士しか部屋に入らないのだが──織田組を手入れした時は例外──、あの時ばかりは僕のえずく声に血相を変えた長義と三日月が突入してきて驚いたなぁ。
あの時手入れしていたのは、確か小狐丸…手入れが終わって、刀を返した直後だったから、幸いにも彼に被害はなかったと思うけど…今度、お詫びに桃明堂の油揚げを買ってあげよう…

そのあとは、うどんを食べ始める辺りまであまり記憶がない。
たぶん、誰かがお風呂に入れてくれたような気がするけど…この年になって人に体を洗われるの、ちょっと心が…うん…。

でも、今回意識なかったし、仕方ない。
男同士だからまだいいな、うん。
椿さんに拾われてすぐの時なんか、あの人に隅々まで洗われたからな。思い出すだけで羞恥心でのたうち回りたくなる。

…とまぁ、今日も今日とて怒涛の一日を過ごした。
これでまだ二日目の夜ってまじ？
濃度が高すぎる…おやすみ。