第135話 ページ43
──時は少し遡り、蔵を後にした僕たちは、ひとまずこの刀箱は置いておくことにして、二手に分かれて行動を開始した。
僕と長義、三日月は残りの負傷者の手入れ。
そして国広と五虎退は、あの刀箱が眠っていた蔵の調査だ。
あの蔵に押し込まれた二代目の私物の中に、何か遡行軍との関りがわかる証拠が眠っているかもしれない。
ただ、いくら成人男性の私物にしては少ない荷物だったとはいえ、たった二振りで探すのも大変だろうとうことで、事情を知る長谷部と薬研、そして不動の三振りにも手伝ってもらった。
ちなみに、宗三には「そういうのは僕の仕事じゃありませんから」とにっこり笑って断られた。
五振りで捜索した結果、三分の一ほどの整理が終わったようだが、今のところめぼしいものは見つけられなかったらしい。
対して、残りの負傷者の手入れを行っていた僕らと言えば…実は少しだけ、大変なことになっていた。
「それにしても…まさか、僕の結界を見た男士たちが、こぞって押し寄せてくるとは思わなかったよ…」
ハンガーにかかった新品のジャケットの横に、これまたパリッとしたスラックスをかける長義を見ながら、そう疲れた息を漏らす。
長義が着るには小さ目なスーツ一式を前に、彼は肩をすくめた。
「仕方ないよ、霊力は誤魔化しがきかないからね。どれだけの聖人であっても、霊力が濁っていればその者の腹の内は黒いも同然…
だが、君の霊力は本当に美しかった。それは彼らにとって、どんな言葉よりも君を信頼するに足る人間だと判断するいい材料になった」
「それならいいけど…でも、だったらもっと早く結界を張っておけばよかったなぁ。
そしたら、もっと楽に進んだかもしれないのに」
「それはどうかな。三日月宗近たちの信頼が得られない状態で、大人しく結界が張れたかどうかは甚だ疑問だよ」
まぁそれもそうか、と納得して布団を口元まで被る。
何があったのかと言えば、蔵で国広達と別れ、さぁ手入れを始めようとしたところ、たくさんの男士が待ち構えていたのだ。
彼らはどうやら僕の結界が張り巡らされる様子を見ていたらしく、その霊力の清純さに初代の審神者を思い出し、ようやく僕を本当に信頼できると確信したようだった。
椿さんから僕の経歴を聞いて、自分たちと近しい境遇に警戒心はほどけていたものの、どう接していいのか、本当に大丈夫なのかと不安を抱く者も多かったと、もみくちゃから解放された後に鶴丸から聞いている。
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年11月14日 17時
