九秋審神者、黒本丸を立て直す参 (ページ42)

今日:19 hit、昨日:80 hit、合計:34,355 hit

第134話ページ42

「もしかしたら、この刀箱には誰か刀剣男士が封じられているのかもしれない。
何が足りなくて開かないのかはわからないけど…
誰か行方不明になってるとか、心当たりはある？」

普通に考えたら、虎くんがあの地下室に閉じ込められていたのだから、その傍にあった刀箱には五虎退が封じられていそうなものだ。
しかし、その五虎退はここにいる。

ならば、一体誰がこの絢爛な刀箱に封じられているのか？
ここまで露骨にしておきながら、まさか何も入っていないなんてことは無いだろうし…

その疑問を解消するべく三振りを見回すも、彼らは少し考えてから首を振った。

「行方不明の刀などいない。うちは確かに大所帯だが、全振りの所在は把握している」

「そっか…じゃあやっぱり空なのかなぁ。
もしくは、よその刀を攫ってきて閉じ込めてるとか？」

「何にしても、開けられないのではどうしようもない。
今は保管しておくしかないね」

結局、新たな謎が残ったまま僕たちは蔵を後にした。
三日月たちの話によると、僕が見た謎の男は二代目なのではないかという。
ちなみに、この男の姿は僕にしか見えていなかった。

だが、もし仮にあれが本当に二代目だったとして…どうして彼は、わざわざ僕にこの刀箱を見つけさせるような真似をしたんだろう。
こういうものって、見つからないようにするのが普通じゃないか？

莫大な霊力の檻、開かずの刀箱、そして強い思念を残してまでこの箱の存在を示したがった二代目…

…一つだけ、受け入れたくない可能性が脳裏をよぎったけど、今はそれ以上考えないことにした。
いずれわかることだ。だから、今はもう少しだけ、二代目はただのバカだったと思い込むことにする。

＊＊＊

「う～頭痛い…今日はマジでもう無理…」

「だからあれほど無茶をするなと言ったのに…
ほら、寝るならちゃんと布団に入るんだ。冷えるぞ」

敷布団の上に仰向けに倒れ込むと、僕の両腕を掴んだ長義に引き起こされる。
そのまま片腕で僕を抱えると、掛布団をめくって中に入れ、肩までかけてくれた。

「ちょぎママ…」

「二回目だな？」

「お手を煩わせてしまい大変申し訳ございませんでした長義様」

「よろしい」

つけていないはずの般若のお面が長義の顔に見えた気がしたので、早口でまくし立てると、長義は般若を引っ込めて出しっぱなしだった新品のジャケットを押し入れのハンガーにかけた。
その押し入れの中には、例の開かずの刀箱が仕舞われている。