九秋審神者、黒本丸を立て直す参 (ページ32)

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第124話ページ32

自信たっぷりに頷く長義。
さすがシゴデキ。

二代目が遡行軍の呪いを使用していたという事実は、今後に大きく関わってくるだろう。
もしかすると二代目は、他にも何か爪痕を残しているかもしれない。
それらを調査して椿さんに報告すれば、後は彼女がその先を調べてくれる。
僕は、ここの審神者から政府の闇を芋ずる式に引きずり出すためにやってきたのだ。

「一応聞くけど…二代目と遡行軍の関係について、知っていることはある？」

「いいや…二代目は演練にも政府での会議にもほとんど行かずに、ずっと本丸に閉じこもっていた。
外部とやり取りする手段もないし、遡行軍どころか、その政府の人間が来たことなどなかったぞ」

すっぱりと答えた国広に、嘘をついている様子は無い。
それに同調して頷く五虎退や三日月も、本当に心当たりはないようだ。

となると、二代目は男士たちに加担はさせず、単独で何か企んでいたことになる。
まぁ、彼らの忠誠はまだ初代にあるからな…その初代が立派な人だった以上、二代目が悪に手を染めているとわかっていたら、彼らは二代目を止めただろうし。

「みんなも知らないってことは、二代目はよっぽど慎重に隠していたみたいだね…ひとまず当面の目標は、二代目が隠した遡行軍との繋がりを見つけて、椿さんに報告することかな。
僕らじゃ政府の内部に潜入することはできないし、その先の調査は先輩に任せるしかない」

二代目が亡くなってから、彼の荷物や痕跡は全て蔵のひとつにまとめて押し込んでいるらしい。
僕が男士たちの手入れをしている間、国広たちでその中を調べてくれることになった。

「調べる時はくれぐれも気をつけてね。もしかしたら触れるだけで呪われる呪物とかあるかもしれないから。
何か怪しいもの見つけたら、すぐに僕を呼んで。呪いの類いにはそれなりに詳しいからさ」

「わかった、肝に銘じよう」

神妙に頷く国広に笑みで返して、さっそく行動を開始しようと立ち上がる。
しかし、国広と共に部屋を出ていこうとした五虎退の後ろ姿に、ずっと抱いていた違和感の正体を突き止めて、咄嗟に声をかけた。

「五虎退、ちょっと待って！」

「えっ…ど、どうか、しましたか…？」

「何か足りないと思ってたけど…ねぇ、五虎退。
虎くんはどうしたの？」

通常ならいつも五虎退と共に在るはずの、大きな虎。
その姿は、この本丸に来てから一度も見ていない。