第123話 ページ31
けれど、この憶測を憶測のままで終わらせるつもりは毛頭ない。
そのために、僕はここに来たのだ。
「実は、ここに来る前椿さんから聞いていたんだけど…実際に見て確信したことがあるんだ」
「確信したこと…？」
「うん。この本丸の先代…
二代目の審神者が、遡行軍と繋がっていたってこと」
空気がひやりとしたのを肌で感じながら、
「三日月。太鼓鐘についていた呪い、覚えてる？」
「あぁ。確か、遡行軍で最近開発されたと言っておったな。…まさか」
自分の言葉で得心したのか、わなわなと唇を震わせる三日月に、浅く頷く。
あの時は何よりも先に、僕が遡行軍のことについて知っていたことが問題になって、それどころじゃなかったからな…
太鼓鐘のことも聞いていたらしい国広と五虎退も、僕らのやり取りで理解したのか、拳を握って息を呑んでいる。
それに応えるように、僕は三振りを見回して口を開いた。
「そう…遡行軍でつい数年前に開発されたばかりの術を、どうして審神者が使えたんだろうね？」
…実は、僕がこの本丸に配属されたのは、単なる偶然ではない。
例の、遡行軍にも時の政府にもいた男…名を"睡蓮"。
僕の"審神者失踪に時の政府が関わっている"という話を聞いた椿さんが、審神者の中にも協力者がいるのかもしれないと考え、睡蓮との接触が多かった審神者…つまりここの二代目審神者を引き当てたのだ。
しかし二代目は僕が政府に保護されて間もなくの頃に死亡しており、本丸の男士たちは後任の審神者をことごとく拒否していた。
そこで刀剣男士も加担させられているという可能性も考慮しつつ、二代目が遡行軍と関わっていたという証拠が残っていないか探すため、僕はここに配属されたのだ。
そして、太鼓鐘にかけられていたあの呪いで、確信した。
「外部の存在が呪いをかけた可能性もほぼ無いからね…
茎は柄を外さないと見えない所だ、そんなところに呪いを付けられるのはその男士の主しかいない」
刀身や人の身に紋がついていたならまだしも、茎に触れられるのはその刀剣男士本人か、審神者が手入れをする時くらいのもの。
まさか太鼓鐘が自分で呪いなんてかけるわけないし、そうなると必然的に犯人は一人に絞られる。
「このこと、椿さんに話してくれたよね？」
「もちろん。これで、ここの二代目が遡行軍と繋がっていたことは確定したわけだからね」
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年11月14日 17時
