九秋審神者、黒本丸を立て直す参 (ページ29)

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第121話ページ29

慣れた手つきで打ち粉を叩きつけ、拭紙で拭き取る。
今回も手伝い札を使うので、一度で終わった。

本当に便利だな、手伝い札…それにしても、依頼札が全然ないのはわかるけど、手伝い札がここまで残ってるのは何なんだ？
手入れを怠っていたにしても、鍛刀の時に使わなかったのかな…

よくわからんな、と思考を諦めて納刀した刀を国広に返す。
重傷よりの中傷だった国広もすっかり回復し、修業後特有の凛々しさも戻っていた。

「実になる話ではない…とは、どういうことだ？」

刀を受け取った国広に問われ、どう返すべきかと首をひねって逡巡する。
次の五虎退の刀を受け取ってから、歯切れ悪く口を開いた。

「うーん…何というか、証拠がないんだよね。
ほとんど僕の憶測だし…
椿さんはそれが真実だって言っていたけど、あくまで手がかりになるかもしれないってだけであって、別に君たちの初代の居場所を特定できるものではないから」

「そ、それでも、大丈夫です。教えて、ください」

そう言って僕の目を覗き込む五虎退は、決意を固めたような、強い信念を抱いた瞳をしていた。
ずっと僕に怯えていた…というより、いつ牙を剥こうかと遠くから窺っていたような彼が、真っ直ぐに僕と対面している。
それがなんだか嬉しくて…と同時に何か違和感を感じて、言い知れぬ不安が胸中を占めるが、ひとまずそれは端に寄せて一つ頷いた。

「わかった。話すよ。
…と言っても、本当に僕から言えることは少なくてね…

まず結論となる僕の推測を話すと、時の政府に所属する一部の人間が歴史修正主義者と繋がっていて、定期的に審神者を遡行軍に攫わせてるんじゃないかってこと」

そう思った理由は単純。僕がまだ遡行軍の本丸にいた時代、そこで稀に見た人間と同じ存在を、時の政府の施設内で見たからだ。
しかも潜入したという雰囲気でもなく、普通に椿さんやほかの政府職員とも接触していた。
椿さんの態度を思い出すに、結構立場の高い、しっかりとした役職を持つ人なんだと思う。

だが、その人間は確実に黒だ。
他人の空似という可能性も考えてみたけど、彼が以前遡行軍本丸に来た時、時の政府の社員証を落としていたのだ。名前も顔も役職も一致。もう真っ黒。

歴史修正主義者と繋がっているのか、もしくは本人が歴史修正主義者なのか…
しかし、圧倒的に証拠が足りない。僕が遡行軍の本丸内で彼を見たと言ったところで、写真も音声も何もないのだから信じられるはずがない。