第109話 ページ17
ならば、あと可能性があると言えば二重人格か…
でもなんだかしっくり来ないなぁと思いつつ、とりあえず今はそれを思考の端に追いやって、温かいお茶で落ち着いた村雲江に向き直った。
「じゃあとりあえず、二代目が亡くなってから少しずつ見えなくなっていったってことでいいんだね？」
「うん。けどまだ完全に見えなくなったわけじゃなくて、こう…すべてがぼんやりとモヤがかかった感じだけど、まだ見えてはいるよ」
二代目が亡くなってから少しずつ…ということは、霊力の供給が無くなって視力に影響が出たのだろうか？
けれど、その可能性は低い。
本来ならば刀剣男士は、一定の期間審神者との距離が離れすぎていると、顕現を保てなくなる。
それは自身の名を呼び、この世に顕現させ物語を実体化させた人間との縁が薄くなるからだ。
この村雲江も同じで、彼の物語を己の魂を以て確かなものにした審神者から遠く離れたことで、彼の物語の力が弱まり、顕現が難しくなってしまった。
それの対処法は二つ。
一つは主である審神者の元へ連れていくこと。
そしてもう一つは、他の審神者が霊力を与えること。
では、それらの手段がどちらも適用できなくなった場合どうなるのか？
答えは、"顕現が解ける"だ。
村雲江は、二代目が亡くなってから少しずつ視力が悪くなったと言っていた。
しかしそれは、霊力の供給が途切れたことが原因では無い。
霊力の供給が途切れるとはつまり、顕現が保てなくなることに繋がるからだ。
まだ人の形を取っている彼に、その可能性はない。
なのにこの村雲江に現れた異変。
顕現は解けずに、視力だけ失っていく…
その原因に心当たりがあるとすれば、一つだ。
「村雲江。君、もしかしたら、呪いか何かをかけられているのかもしれない」
「えっ…の、呪い…？」
僕の言葉に顔を青くした村雲江に、三日月は目を丸くして口を挟む。
「雛よ、心当たりでもあるのか？」
「いや、心当たりというか…ほら、審神者と一定期間離れすぎた刀剣男士って、顕現が保てなくなるでしょ？
村雲江は二代目に霊力をもらうことで顕現を保ってたけど、今はそれがないのにまだ刀に戻る気配はない。
それはつまり、彼に呪いか何かを付与することでその身に審神者の存在を示して、強制的に彼の物語を繋ぎ留めているんじゃないのかなと思って」
「そんなことが可能なのか？」
「一応ね…かなり無理矢理な方法だから、あまり推奨は出来ないけど」
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年11月14日 17時
