第42話 ページ44
「…っははは、あぁ…久しぶりだ。
こんな…人間に触れられて、温かくなるのは」
刀を握る拳を額につけて、どこか懐かしむように頬を緩ませた鶴丸。
そんな彼の様子を、背後の燭台切は、今にも泣き出しそうにくしゃりと顔を歪めて見つめていた。
それに気付かないふりをして、僕は切り替えるように手をぱちんと一度打ち鳴らした。
「さ、鶴丸も元気になった事だし！
ほかの三振りも、サクッと手入れしちゃうよ！」
そう言って長義に次の分の資材を並べるよう頼んでから、一番傷の深い太鼓鐘の元へ向かう。
その枕元にある彼の本体の前で膝をつき、堀川の時と同じように「今治してあげるからね」と声をかけてから、刀を持ち上げ──
──ようとしたところ、突如左手首を掴まれた。
…まぁ、これですんなりやらせてくれるわけないことくらい、わかっていたけども。
そちらを見ると、顔を伏せた燭台切が、少しだけ強めの力で僕の手首を掴んでいた。
なんか今日の僕、左側にばかりダメージが行くな…と、ミシミシと音を鳴らす手首に現実逃避を図る。
垂れ落ちた前髪に隠れ、燭台切の表情は見えない。
けれど、殺意は感じなかった。
「おい、光坊…」
「いいよ、鶴丸」
間に割って入ろうとした鶴丸を静止し、燭台切を覗き込む。
「…やっぱり、人間が触れるのは嫌？」
「…わからない。わからないよ。
だって、僕たちは、人間の手によって生まれたんだ。
人間に打たれて、人間に使われて、人間に大事にされて…
でも、その人間に、貞ちゃんは傷つけられた」
…前々から脳裏を掠めていた違和感が、ここではっきりと確かなものになった気がする。
ここの男士は皆、手入れされないまま放置されていた。
最初はてっきり、出陣で負傷したまま放置されているのかと思っていたけど…
どうやら、彼らの傷の原因は、ほとんどが審神者からの体罰らしい。
もちろん、出陣先で負傷し、そのまま放置されたと言う男士もいるだろう。
けれど、特にこの伊達組の四振りは、審神者からの身体的苦痛を強く受けていたのかもしれない。
それにしても、人間より遥かに丈夫で頑強な刀剣男士をここまで追い詰めるなんて、一体どれほどのことを仕出かしたのだろうか。
考えるだけで反吐が出そうになる。
「燭台切。僕には、君たちが受けてきた仕打ちの数々が、どれほどのものだったのかわからない。
簡単に信用出来ないのもわかる。
でも…ごめん。僕を斬るなら、せめてみんなを治してからにしてほしい」
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774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
