第40話 ページ42
「だが…それでも、どうすることもできなかったんだ。
すべての原因である先代は、あっさりと逝ってしまった。
だから、それからの俺たちにできることはただ一つだけ。
これ以上、大切なものを奪わせないことだけだった」
「…鶴さん…」
震える手で刀を握りしめる鶴丸に、燭台切はかける言葉を失う。
ぶつける宛てのない激情を抱えたまま、ずっと堪えてきたんだ。
己の身を傷つけられ、大切な仲間を苦しめられ、それでも何もしなかった彼らは、一体これまでどれだけの苦汁を飲み干してきたのだろう。
「…けどなぁ…心のどこかで、願ってしまうんだ。
まだ、人を愛したい。
まだ、人と共に生きたい、と」
ぽたり、と手の平に生温かな雫が落ちる。
俯いた鶴丸の瞳から、決壊したように絶え間なく涙がこぼれていく。
「新しい後任が来るたびに、心のどこかで期待していた。
次こそ、今度こそ。
また、俺たちと共に生きてくれる。
俺たちを愛し、愛させてくれる…
そんな審神者が来ることを」
きっとその想いは、彼のこれまでの主たちや、初代の審神者との思い出が、まだ彼の中で生きているからなのだろう。
…寂しかったのだろうか、この鶴丸国永という刀は。
僕は刀剣の知識は浅いし、彼らの歴史もよく知らない。
審神者になるには、あまりにも無知だ。
けれど…
「…僕は、誰かを愛する気持ちとか、共に歩んでいく道のりの重さとか、そういうものに触れてこなかった。
だからもしかしたら、あなたがこれまで大切にしてきたような温かな思い出を、僕ではあげることができないかもしれない。
でも…
みんなが笑って毎日を過ごして、安心してここに帰って来られるように、僕は全力を尽くすよ」
しっかりと鶴丸の目を見つめて、はっきりと自分の意思を伝える。
きっと、涙で僕の顔なんか見えないかもしれないけれど、それでも、僕は彼から目を離さない。
そうしないと、きっと…消えてしまいそうな気がしたから。
そんな僕の気持ちを感じ取ったのか、鶴丸は小さく鼻をすすって乱暴に目元を拭うと、真っ直ぐに僕に視線を返した。
「…いいんだな。信じても」
「うん。もしも、僕が期待外れだったその時は、これまでの後任たちみたいに、斬りかかって追い出してくれて構わない」
「っは…ずっと思っていたが、きみは何だか、変わっているな」
おや、鶴丸にも変人認定されてしまった。
なんだか解せない…と口をへの字に曲げていると、両手に重みを感じた。
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774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
