第3話 ページ5
戦装束を身にまとった三日月宗近は、やはり手入れがされていないようで服がほつれ、傷もある。
パッと見たところ、軽傷くらいだろうか。
すぐに抜刀しないのをいいことに、まじまじとその様子を観察する。
彼は
彼の元主であるここの前任と言えば、この本丸を真っ黒に染め上げた張本人だ。
そんな主が仮に帰還したとすれば、多くはその顔を憎悪に歪めるだろう。
なのに…どうして、こちらに気づいたその一瞬、喜びに打ちひしがれるような、期待の眼差しをしていたのだろうか。
やっぱり、この本丸は──
「──なんだ。違ったか」
先ほどから立てていた仮説が確信に近づこうとした時、酷く冷え切った声に、心臓を鷲掴みされたような心地になった。
背筋を伝う冷や汗に気づかぬふりをして、三日月の目を見返す。
すると彼は、先ほどまでの喜びの感情がすとんと抜け落ちた、鋼鉄の如く冷ややかでひどく無感情な目でこちらを
さすがは天下五剣。その威圧感も殺気も伊達じゃない。
これまで感じた危機感の中でも、いっとう重く圧し掛かるものがある。
まるで、薄氷の上に立たされている様な、そんな一歩間違えたら終わりという雰囲気の中、僕はにっこりとわかりやすい愛想笑いを浮かべた。
「半分間違いですけど、半分正解です。三日月宗近。
僕は、今日からこの本丸を継ぐことになった、後任の審神者──つまり、あなたたちの新しい主ですから」
口元は引きつらないように。
眉尻は下げて、目はしっかり山なりに。
声は穏やかに、怯えも敵意も混ぜてはいけない。
暗示のように脳裏で繰り返し唱えながら、どこからどうみても完璧な愛想笑いを貼り付ける。
そうしていると、途端に三日月も穏やかに微笑んで見せた。
「そうかそうか、このような辺境の地までよく来てくれたなぁ」
労いの言葉をかけながら、袖で口元を隠しふくふくと笑っている。
一見すれば、歓迎されているように思うだろう。
もしかすると、この場にいても、鈍いものはそう捉えてしまうかもしれない。
けれど…依然として全身を突き刺すような鋭い殺意は、そんな甘い夢を許さない。
「だが……我らに主は不要。即刻、立ち去るがいい」
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774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
