第38話 ページ40
「──鶴丸は優しいんだね」
「──は？」
するりと口から出ていった言葉に、鶴丸も、燭台切も、大倶利伽羅さえ、その顔色を驚愕に染めた。
ハトが豆鉄砲を食らったような、そんなおかしい顔で固まる三振りを前に、僕は笑いを零すことを我慢できなかった。
「ぷ、あははっ、おんなじ顔」
「き、みは…何を、言っている？
俺が、優しい？脅されて、頭がおかしくなったのか」
早めに復活した鶴丸によって、絞り出すような声が静かに響く。
頭がおかしくなっただなんて、酷い言い草だ。
ひとしきり笑った後、ふぅと一息ついて、また鶴丸を見上げる。
怯えたようにびくりと肩を引く様子に、僕は首を傾けた。
「おかしくはなってないよ、たぶん。
優しいって思ったのは本音。
だって、考えてもみてよ。
斬りたいほど憎い相手が目の前にいるのに、斬ることはしないんだよ？
これって、すごく理性的で優しいってことだと思うんだ」
率直な意見を述べ、顔を綻ばせると、鶴丸の瞳が揺れる。
…これは僕の憶測でしかないが、恐らく、この本丸にいる男士たちは、心から人間を憎しみ、すべてを拒絶するような者はいない。
その根底には、人に打たれた記憶や、元主たちとの優しい思い出が残っているのだろう。
だから、これまでやってきた後任たちの首を落とすこともせず、五体満足で返していたのだ。
まぁ、本当に首を落としたら、その時点で本丸の解体が決まるだろうし、それを避けたかったからという説もあるけど。
でもそんな面倒なことをするくらいなら、本霊に還るなりした方がずっと楽だ。
それでもこの本丸に残り続けるのは、初代を待ち続けているのは、心の深い深い奥底で眠る「人が好き」という感情を、捨てきれないでいるからなのではないだろうか。
二代目審神者を、もっと早い段階で急性アルコール中毒にさせ、その命を絶たせることもできただろう。
後任たちだって、追い返したりせずに受け入れた後、都合のいい道具のように扱って、手入れなどをひたすらさせるロボットのように調教することもできただろう。
けれど、彼らはそれをしなかった。
二代目を意図的に病没まで追い込むこともせず、審神者を家畜化することもなく、ただ己の扉を固く固く閉めて、耐え続けた。
そんな気が狂いそうなほどの激しい痛みが伴うことを、愛する気持ちもなしにどうしてできようか。
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774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
