第37話 ページ39
しかし、これによって今度は三日月と長義が裏切ったと思われるのも、それはそれで困ったことになる。
利害の一致とはいえ、せっかく協力してくれる存在ができたというのに、一緒に放り出されてしまっては意味がない。
さてどうするか…
相手の出方次第では一気に詰んでしまう。
ここからどう切り返そうかと脳内で今後の展開を組み立てていると、不意に大倶利伽羅が刀を下ろした。
突然のその行動に、燭台切が驚きの声を上げる。
「伽羅ちゃん!?」
まさか、初めに行動を起こすのが大倶利伽羅なんて…本当に個体差がすごいな。
しかも、斬りかかられると思ったら、その逆とは…
予想だにしなかった事態に僕も動揺していると、静かな金色の瞳は、揺らぐ様子も曇ることもなく、しっかりと僕を捉えた。
「そんなに言うなら、まずは俺をやってみろ。
もし、それで妙なことをすれば…お前を斬る」
どういう風の吹き回しか、大倶利伽羅はそんなことを言い出した。
まぁ、手入れさせてくれるならなんでも──
「待て、伽羅坊」
それまでじっと黙っていた鶴丸国永が制止する。
やっぱりまだできそうにないかな…と小さく息を吐きだすと、立ち上がった鶴丸はこちらへ近づき、ずいっと己の本体を僕に押し付けた。
「その役目、俺が務めよう」
「なっ、鶴さんまで…！
ダメだよそんなの、折られたりなんかしたらどうするの！」
突然動き出した鶴丸に驚いていると、その手は酷く震えている。
僕に押し付けられた太刀にその震えが伝達し、カチャカチャと装飾がぶつかる音が響いた。
僕よりもずっと背の高い神様が、僕を見下ろして震えている…
その様子がどうにも痛々しくて、けれど目をそらす権利は僕にはないと奥歯を噛み締め、しっかりと鶴丸を捉えた。
「震えてる。怖いの？」
「はっ、怖い？まさか。
君のような赤子など、取るに足らない──」
「僕じゃない。
…審神者という存在が、怖いんでしょ」
鶴丸と僕を引き離そうとする燭台切を大倶利伽羅が止めると、その間に語り掛ける。
まだ、彼の太刀は受け取っていない。
僕の言葉に、刀の装飾が一層大きな音を立てて揺れる。
鶴丸は、憎々しげに唇を噛み締めた。
…その唇は酷く乾燥し、ところどころ切れて血が滲んでいる。
「怖くなんかないさ。
審神者といえど、俺たち付喪神からすれば小さな存在にすぎない。
だが…憎しみは、俺の中に深く根付いている。
今すぐにでも、君を切り伏せたいと思うほどにな」
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774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
