第30話 ページ32
そう弁明すると、三日月はあっさりと冷ややかさを引っ込め、「ならばよい」と笑った。
…やっぱり、三日月の言う通り、彼が僕に対して好意的な印象を抱いているのは本当らしい。
今の問答も、確かに視線は冷たかったが、命を取られる危機感のようなものは感じなかったし、だからこそすぐに否定ができたのだけど。
けれど感情の変化の原因なんて、本人が分からないのに他人に分かるはずもない。
これから共に生活を続ければ自ずと答えは出るだろうという結論になり、僕らは残りの軽傷･中傷者を探すために部屋を出た。
「あぁそうそう。お願いだから、誰が聞いてるかわからないところで真名を言うのはやめてよね。
過激な男士に聞かれたら一巻の終わりだよ」
サラッと流してしまったが、話の途中でナチュラルに真名を挟むのは切実にやめて頂きたい。
周りには重傷を負って眠っていた者しかいなかったとはいえ、体は眠っていても脳が覚醒して周囲の音や匂いがわかる状態だったらどうするんだ。
すると三日月は不敵な笑みを浮かべ、僕が持ち上げた資材入りの木箱を取り上げた。
「なんだ、お前の命は紙のように軽いのではなかったのか？」
手入れをして傷が塞がり、血の匂いがしなくなった三日月は、そのせいか先ほどより雰囲気が軽い。
その口調も、脅かしや皮肉というよりは、からかいのような空気を帯びている。
まさか、荷物持ちを率先してやってくれるとは思わなかったな。
目に見える変わりように、気持ち少しだけ挙動不審になりつつ、僕も好戦的な笑みで返した。
「あなたを見ていたら、忘れていたことを思い出してね。
…僕には、やらなきゃいけないことがある。
それを遂げるまでは、気軽にしねなくなったかな」
「ほう…？やらねばならぬこと、とな？
それは一体どんな？」
「ふふ、内緒」
「時の政府への復讐かな？」
「なわけないでしょ。縁起でもないこと言わないのちょぎたん」
「そうだぞちょぎたん」
「やかましい」
三日月がこういう悪ノリに乗ってきたのが意外すぎて、おまけに間髪入れない長義のツッコミのキレもすごかったから、思わず噴き出してしまった。
「ぷっ、あはははっ！三日月でもそういうこと言うんだね。ふ、くくく…」
「はっはっは、うむ。そうやって笑っていた方がいいな。
年相応に見えて、警戒心が薄れる」
「えっ何、今までの僕そんな風に見えてたの？」
年相応に見えてなかったのか。
というか、僕の年齢わかってるのかな？
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774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
