第29話 ページ31
咳払いをしてから三日月に向き直ると、彼は顎に手を当てて思考を巡らせるようにううむと唸った。
「己のことであるはずなのに、どうしてこのような感情になるのかがよくわからなくてな。
そして恐らくだが、和泉守も、似たような状態になっていると思うぞ」
「え、なんで？」
「さぁなぁ…ただわかることは、俺がお前と顔を合わせて間もなくからこのような感覚に囚われたのに対し、和泉守は手入れをされた後から感じるようになったようだな。
手入れの前と後では、顔つきが違っただろう？」
三日月の言葉に、ふと和泉守の様子を思い出して、確かにと頷いた。
手入れ前の和泉守といえば、この世の憎しみを混ぜて煮込んで固めたみたいな雰囲気をしていたのに、手入れ後はどこかスッキリとした様子で、本来の堅実さを取り戻しているようだった。
しかしそれは、手入れをしたことにより傷が塞がり、痛みがなくなって思考が整うようになったからでは？と首を傾げるも、三日月はそれだけではないと否定する。
どういうことなのかと考えてみても、一向に答えには辿り着かない。本当に心当たりがない。
あれか、たまに聞くチート能力的なやつで、手入れをした男士の好感度があがるとか？
いや、そんなものがあったらわかるはず。だって…
「──よもや、真に呪術や妖術を用いたのではあるまいな？」
突として三日月のヒヤリと冷えきった声が木霊し、反射的にブンブンと勢いよく身振り手振りで否定する。
「それは絶対にない！真名に誓ってない！
だって僕、そういうものが使えないようにって、かなり強力な制約をかけられてるから」
「その通り。彼に呪術やその類は使えないよ。
俺がその場に立ち会ったからね」
長義が頷いてくれて安心する。
この本丸に来る前、いろいろと制約を重ねがけされたのだ。
その場には長義がいて、制約をかけたのは僕がお世話になった先輩の審神者。
その人は政府の討伐課所属の審神者で、霊力の質もよく、封印や解呪などを得意としていた。
その人がかけた制約は完璧だったし、今も問題なく続いている。
技術的にも経験的にも圧倒的に上な先輩がかけた強力な術は、念の為確認として一度破ろうと試みたけど、どれだけ全力をだしてもヒビ一つ入らなかったのだ。
だから今の僕では審神者として必要な術、例えば結界や霊力の操作程度しかできないし、先程言ったような特殊能力があったとしても封じられているはずなのである。
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774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
