第2話 ページ4
「…ねぇ、本当にここが目的の本丸で合ってる？」
「あぁ、間違いない。座標も本丸名も同じだ」
門を閉じて振り返り、周囲を見回して思わず出た言葉に、長義は眉一つ動かさずに淡々と答える。
しかしその言葉を上手く呑み込めない僕は、眼前の光景に瞬きを繰り返した。
「…なんか、ブラック本丸って、もっとこう…荒廃してるイメージがあったんだけど」
ぽつりと呟けば、珍しく同意したように長義も頷く。
"ブラック本丸"と呼ばれるほどだ。その内側は酷く荒れ果て、瘴気に満ちているのがデフォルトだと考えるのは自然だろう。
しかし、ここはそんなブラック本丸のイメージとはかけ離れていた。
石畳の道は欠けもなく整備され、脇に並ぶ灯篭も傷一つなく綺麗に磨き上げられている。
雑草も手入れされているし、遠くに見える本殿の襖も破れていないし、何より想像より空気が重くない。
確かに、男士たちはロクに手入れもされていないと資料に書いていたから、多少なりとも瘴気の淀みは感じる。
けれど、確実にここの男士たちは、ブラック本丸と呼ばれるほどの過酷な環境に身を置きながらも、この本丸をしっかり維持している。
どういうことだ…？
聞いた話では、ここの男士たちは強い人間不信に陥っており、これまでも何人か審神者や政府の人間を派遣したが、全員「五体満足で帰って来られたのが不思議なレベル」に酷な仕打ちを受けたらしい。
そのくらい人間を拒絶している男士たちだ。
本来なら、顕現を解いて本霊の元に還ることもできるはずなのに、なぜこうも本丸に留まろうとするのか。
ここに来る前に頭に詰め込んだ資料の内容を思い出して、ふと一つの可能性に気がつく。
それを確かめるべく、長義を振り返った。
「ねぇ、長義。この本丸ってさ──」
「──主か？」
言いかけた時、背後から何者かの声が届いた。
その声に誘われるまま、反射的にそちらを振り向くと、そこには──
「…三日月…宗近…」
──最も美しいと言われている天下五剣が一振り、三日月宗近の姿があった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 168人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
