第27話 ページ29
ここで拒否されたらどうしようかと思ったが、すんなり預けてくれたことに驚きつつも安堵する。
供物台に資材と手伝い札を並べ、鞘から刀を抜き、柄を外し、と慣れた手つきで作業を進めながら、ふと気になったことを口にした。
「そのさ、"相談役"って呼び方定着させるつもり？」
「なんだ、やはり主と呼ばれたいのか？」
「いや、なんか長くて呼びにくそう。
さっきはてきとうに言っただけだから、語感とか全然考えてなかったし」
「気にするところ、そこなのか…」
おかしそうに息を漏らす三日月に続き、僕のズレた答えに長義が呆れた。
いやだって、「主」と「相談役」だよ？
男士の中では違う呼び方をする者もいるけど、長くても「主殿」とか「大将」とかの五文字前後だ。
それに対し、「相談役」は六文字。
「相談役殿」だと八文字だ。長い、呼びにくい。
何かいい呼び方はないかな、と至極どうでもいいことを考えながら打ち粉を刀身にまぶす。
「もうシンプルに"代理"とかでもいいかなぁ」
「なんの代理なんだ」
「うーん、初代の？
ほら、僕って初代が帰ってくるまでの代わりじゃん」
正当な後任として来た人間がそんなことを言うな、と長義が呆れ返って頭を抱えている。
色々な情報やら条件やらが多すぎて忘れていたけど、そういえば僕って本来はこの本丸の正当な後継者として来たんだった。
なんかごめん。
でもほら、"代理"なら、殿とかさんとか様とかつけても五文字で収まる。丁度いいじゃん。
打ち粉を拭き取りながら名案だ！と一人頷くと、長義はとっても深ぁい溜息をついて、一方の三日月は楽しそうにふくふくと笑った。
「お前がそれでいいのなら、俺は構わんよ。
…ふふ、お前は本当に変わっているな、A。
これまでやって来た後任は、皆己がここの主になると信じて疑わなかった。
強引にこじ開けては、こちらの領域を土足で踏み荒らし、我々に歩み寄ろうとはしない。そんな者ばかりだった。
…人の子は好きだ。愛おしいと思う。
しかし、こうも仲間が傷つけられては、好きであっても許せるものでは無い。
だが…お前は、違うのだな」
凪いだ湖面のように、静かに澄み通った瞳に捉えられる。
僕は苦笑を浮かべて、首を緩く横に振った。
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774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
