第20話 ページ22
「それはなんでか分かる？
彼らが、そういう人間だったからだよ。
人間だからって、すべてが善なわけではないけど、すべてが悪なわけでもない。
僕は君の元主たちと同じだ、なんて言えないけどね。僕はそんなに綺麗じゃないから」
左手が熱を帯び、ジクジクと鈍い痛みが増していく。
それを表に出さないように、必死の笑顔で取り繕う。
和泉守は唇を震わせて、言葉にならない感情に支配されているようだった。
なんて顔してんだ、と心中でからかいながら、揺れる和泉守の瞳をじっと見据えた。
「僕が手入れをしてる間は、こうして刀を突きつけていても構わない。
だから、お願いだ。君と、君の仲間を、助けさせてくれ」
静まり返った部屋に、堀川たちのひゅうひゅうという浅い息遣いだけが木霊する。
後ろの三日月と長義は、今どんな顔をしているんだろう。
まぁ、別に変らないか。特別な関係でもないしな。
現実逃避のように見えない二振りの表情を予想していると、先ほどまでより随分と落ち着いた声音の和泉守がぽつりと呟いた。
「…本当に…治してくれんのか。
俺たちのこと…国広のこと」
「あぁ。絶対にだ、約束する」
間を置かずにしっかりと頷けば、また首横で髪が切れ落ちる。
それと同時に、目にいっぱいの涙を湛えた和泉守が、刀を持つ手を緩めた。
僕も様子を見ながらゆっくりと左手の力を抜き、やがて刀身を手放す。
すると和泉守は刀を振るう様子はなく、ただ「信じたわけじゃねぇからな」と言い放ち、こちらに背を向けた。
…ひとまず、この部屋の手入れは進みそうだ。
そのことにホッと胸を撫で下ろし、長義を振り返る。
「よし、始めよう！長義、手伝って」
壁に寄り掛かり、腕を組んでいた長義が気づくと、何も言わずにすんなりこちらへ来てくれた。
長義に資材や札を用意してもらっている間に、それぞれの状態を確認する。
まず、一番重傷なのは堀川国広。
そして、今剣、鳴狐、歌仙兼定。
そこに和泉守を含む、計五振りがこの手入れ部屋に押し込まれていた。
堀川は破壊寸前で、今剣と鳴狐と歌仙はまだマシに見えるが、それでも重傷に変わりない。
和泉守だって、中傷の域はとっくに超えてるだろう。
この部屋は重傷者を集めてるのかな？と分析しつつ、必要になりそうな資材の量を計算していると、突然左手首を掴まれる。
驚いてそちらに目を向けると、酷く眉間にしわを寄せた長義が、何かの布を僕の傷口にあてがった。
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774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
