第19話 ページ21
「こいつらに指一本触れさせねぇ…！」
早く手入れしたいのは山々だが、本気の和泉守に立ち塞がれると厄介だ。
先ほどの五虎退、前田、薬研や、国広と一期一振の時は、殺意はあったが本気ではなかった。
恐らくこれまでも、あの時点でやってきた人間を死なない程度に痛めつけ、逃げ帰らせていたのだろう。
だからこそ、僕も対処できたものだ。
けれど、いくら鍛えているとはいえただの人間の域を出ない僕が、本気を出した刀剣男士になんて勝てるはずがない。
助けを求めるように三日月に目配せしても微笑まれるだけだし、長義も首を振るだけ。
うーん、この二人が宥めてくれればなんとかなりそうなんだけどな…
協力は期待できなさそうだし、仕方がないので一人で前に歩み出る。
「来るな！」
眼前に刀が突き付けられる。
それに臆することなく、切っ先の奥に覗く和泉守を真っ直ぐ捉えた。
「和泉守。僕は手入れがしたいだけだよ。
特に、そこの堀川国広。少しの衝撃で折れそうじゃないか。
早くしないと、手遅れにな──」
「はっ、笑わせるな！少しの衝撃で折れそう？早くしないと手遅れになる？
馬鹿言うんじゃねぇ！国広をこんなふうにしたのは、てめぇと同じ人間だ！
それなのに、今更何をしようってんだ!?」
「…そうだよ。僕も、君たちをこれまで害してきた人間と、同じ生き物だ。
──でも」
また一歩、前に進む。
それに気を取られたその一瞬、僕は向けられていた刀身を左手で掴んだ。
「──なッ!?」
和泉守も破壊寸前だろうから、あまり強くは握らない。
けれど、僕の薄い手の皮ではその切れ味に耐え切れず、ぽたりぽたりと生温かいものが流れ出した。
さすがにこの行動は予想していなかったのか、背後の二振りも吃驚に息を詰まらせている。
和泉守自身も、何が起きたのか理解できない様子で、目を白黒させている。
そんな彼らに構う間もなく、僕はしっかりと言葉を打ち出した。
「でも、和泉守。
君の元主らも、同じ生き物だ」
「…っ」
「君の元主らは、こんなクソみたいなこと、しなかったろう？
同じ人間なのに」
刀を引いてしまえば、僕の傷はもっと広がる。
なのに、和泉守はそれを躊躇っていた。
彼が刀を動かさないのをいいことに、僕は刃先を首元へ近づける。
はらり、と毛先がいくらか切れた気がしたけど気にしない。
怒りと困惑がないまぜになったような表情でこちらを見下ろす和泉守に、僕は眉を下げて笑って見せた。
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774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
