第10話 ページ12
「──私は反対です」
静まり返った中、最初に口火を切ったのは一期一振だった。
難しい顔をしてこちらを見据える彼は、憎悪というより、不安や恐怖を抱いているようだ。
「主が…初代審神者が姿を消した後、捜査はすぐに打ち切られました。
その後、押し付ける形であてがわれたのは、あのような愚かで汚らわしい人間…
あの人間に、弟たちがどれだけ傷つけられたか。
私はもう二度と、弟たちが苦しむ姿は見たくないのです」
「いち兄…」
静かで、それでいて強い炎を宿した瞳に見据えられて、僕は口を閉ざしてただ見守る。
五虎退が不安げに一期一振の裾を引くと、彼は困ったように笑って頭を撫でた。
それに続いたのは、予想通り山姥切国広。
「俺も、賛成はできない。
このままでは、本丸の存続自体が危うくなる…それも理解している。
だが、それでも…主の捜索を停止し見捨てたのは人間で、俺たちを…仲間を散々苦しめてきたのも、人間だ。
これ以上、人間が介入することで良くない結末を辿るのは嫌だ」
そういって拳を握りしめる国広は、この中で一番ボロボロだった。
もしかしたら、中傷以上かもしれない。
スネを蹴ったのが、少し申し訳なくなってきた。
この本丸の初期刀である彼は、初代がいなくなったあとも、二代目の暴虐の最中でも、ずっと最前に立って、仲間たちを引っ張ってきたのだろう。
その証拠に、この中で一番練度が高そうだし、何より一期一振たちの目が彼への絶対的な信頼を帯びている。
これは…勝てそうにないな。
やはり五対三は無理か、と息を吐いて長義に目配せする。
撤退しよう。これ以上、彼らの意思を曲げることはできない。
そもそも、この本丸の男士はここにいる六振りですべてではないのだ。
ブラック本丸と化したとはいえ、元々は超優良本丸で鍛刀縁にも恵まれており、現在も七十振り近くが在籍している。
彼ら全員を納得させるなど、最初から無理な話だったんだ。
つまり…政府の連中は、これが「絶対に達成できない任務」だとわかっていたから、僕を遣わせたのか。
あぁ…腹立たしい。
一つの事実に辿り着いたことで、無性にはらわたが煮えくり返ってきた。
けれど、今更どうすることもできない。
この恨みを吐き出すつもりで大きなため息をついてみる。
するとその時、お通夜みたいな空気を打ち破るように、三日月が陽気な声を上げた。
「では、この者が約束を違えた時は、俺が首を差し出そう」
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774(プロフ) - キリンミカンさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*´ ˘ `*)これからも頑張ります〜！ (11月3日 14時) (
レス) @page22 id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
キリンミカン - こういう作品を探していました…！好きすぎて毎日見に来ています。体調に気をつけながらも更新がんばってください！ (11月3日 12時) (レス) @page20 id: e14e8e6fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年10月27日 17時
