序章の三日前 ページ1
主が、亡くなった。
九十八歳。四十八歳から五十年、この本丸で審神者をしてきた。
大往生にも程がありますよ、全く。
「主様ぁぁぁ…」
「主、目を開けろ…俺達を置いていくな…!」
「泣くなお前ら!主の御身体に、響くだろう…っ!」
皆、泣いていた。
短刀達はおろか、長谷部や加州に一期、
…絶対に泣くはずがないと思っていた宗三や鶴丸さんまで号泣していた。
それほど、それほど私達の主は、とても素敵なお方だった。
…主の主治医であり彼の最後の近侍だった私は、
主から少し離れた所に座っていた。
そして、涙を堪えていた。
ただただ、主を救えなかった自分が悔しかった。惨めだった。
"『姫鶴がいたら病気なんて怖くないなぁ、あっはっは』"
"『姫鶴ー、最近皆どう?俺が寝たきりになったからなぁ…
あいつら、寂しがってるだろうなぁ…』"
"『姫鶴…いつもいつも、ありがとうな』"
……けれど、
主との思い出一つ一つが、
主の表情一つ一つが、
…主の体温ただ一つが、私を泣かせにかかってきている。
「姫よ」
「三日月、さん…」
三日月さんが私の隣に座った。
…主か「三日月来ないなぁ」と何ヶ月もぼやいた事もあったなぁ。
「五十年、か…此処で主と過ごした年月は。」
「はい。人間からしたら長いのかもしれない。
ですが…私達付喪神からしてみては、あまりにも短い物です。」
「あぁ、本当にそうだな…短すぎる。」
三日月さんの顔が曇る。
美しい三日月が、雲に隠れてしまうように。
そして、
「姫…近う寄れ」
「えっ……っ!!」
三日月さんの体が私に覆い被さる。
…肩が濡れていくのが、自分でも分かった。
「はっはっは…
・
すまぬ。今だけでいい。こうさせてくれ……っ!」
ああ、駄目だ。
「ふ…うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…」
私までつられてしまうじゃないか。
主、主、
明日からまた、精一杯笑うから。
今だけでいいから、泣かせてください…
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my614 - すみません 日光は姫鶴のあとに つくられた刀なので弟の ほうが正解…福岡は忘れました (2018年3月16日 16時) (レス) id: a703474556 (このIDを非表示/違反報告)
霧月@蛍愛で隊(プロフ) - ココアサイダーさん» ぃよしゃぁああああ!!!!極実装してただけとか、びびらせんなって!!!先がよめなくてハラハラしたけど!!! (2016年10月20日 0時) (レス) id: 1bbe61e1fe (このIDを非表示/違反報告)
ココアサイダー(プロフ) - 霧月@蛍愛で隊さん» こういうことじゃ( ※この作品はシリアルです (2016年10月20日 0時) (レス) id: abb1e24d8b (このIDを非表示/違反報告)
霧月@蛍愛で隊(プロフ) - は・・・?「無事折れた?」っては?どういうことじゃ(威圧) (2016年10月19日 23時) (レス) id: 1bbe61e1fe (このIDを非表示/違反報告)
☆NATU☆ - 夢主ちゃん・・・ってか刀剣男子が純情すぎるww(三日月夢主ちゃんに何かしそうで怖いwww) (2016年10月4日 16時) (レス) id: 82b135c89e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ココアサイダー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uranaikari1/
作成日時:2016年9月6日 1時