―(修正しました) ページ43
「……」
真っ白な雪の降る空の下、まだ開店していない店の前で大きなガラスに背中を預けてため息をつく。口から漏れる息は雪に混じって溶けていく。
久しぶりにこの街に戻ってきてから全てがコロコロと転がっていくような感覚に陥る。
些細なことにも噛みついてしまうのは寂しさのせい。貴方のその切り替えの上手さに転がされた結果。ふとここに足を運んだのは自分の中での時を進めたくなったから。あるいは慣れ親しんだ場所から離れる決意をするため。
「そこのお姉さん、なにかお悩み事ですか？」
エレベーターの扉が開いて近付いてきたのは見慣れないエプロン姿に馴染みのペンギン頭。仕草は知っているけどどこか新鮮な。
「……力二。今更だけどカニメイト開店おめでとう」
「ん、ありがと。……で？」
何か物足りなさそうに手を出した力二。何を求められているのか必死に考えるも思い付かない。それより外にずっといたから身体が震えてきた。
「えっと、寒いからいれてほしいです」
「いやいや、なんかくれる流れじゃないの？」
「お？」
「ん？」
ハテナマークを浮かべ続ける私に、まぁいいや。と近寄る力二。鍵を開けるみたいだったので、隣に避けようとするも逞しい右腕が伸びて来て行く手を塞いだ。
「力二、退いた方が開けやすいよね？」
「さぁ？別にAがそこにいてもオレは邪魔じゃないけど」
「でも私は」
ガチャリと音を立てて開いた扉。押し込まれるように二人で店内になだれ込む。温かな空気がじわじわと身体を包み込んでいく。くよくよと考えていたことを振り払うような幸せな空間が広がっていた。
「一生暮らしてたいくらい最高」
「じゃあここに住む？」
冗談にしては真剣に、すとんと転がり落ちてきた言葉を受け止めそこねる。表情を伺おうと視線を移すとそらすように2階にあがる力二。
「ちょ、力二」
「上はまた雰囲気変わるから」
ついてこいと命令されているような有無を言わせないその背中を追いかける。下を見下ろせる開放感のある2階はまた違ったおしゃれさ。
「綺麗……」
「Aさ、好きな人出来たでしょ」
「え」
やっぱりか、と呟いた力二が私の頬に手を添えた。言い逃れなんてさせない、という圧に縛られる。パチパチと階下から聞こえる薪の爆ぜる音が数日前の記憶を掘り起こした。
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オチに伴い変更しました。
何か書いてるうちに違う方に転がった。
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作者名：宇治銀時 | 作成日時：2024年1月6日 23時
