徒然なるままに、夢を見る。 (ページ22)

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次に目を覚ましたときにはいつも通りの日常、うざったい目覚ましの音に歩きなれた学校までの道、私達学生を管理するチャイムの音。何てものはもちろん無かった。

逆にあったものはもふもふと血ともふもふ。わふわふっと夢中で何かを食べている咀嚼音に先程の鹿と思しき肉塊と、犬のようなそれでいて犬よりも恐ろしく大きな息遣い。

終わった、次は私がもぐもぐされる番だ。そう確信して涙を溢し地面に手をつく。背の低い草が私の手のひらを撫でるその感触と共にねちょっとした生暖かい柔らかなもの。

「ひっ……」

鉄の臭いと獣の臭いがまざったなんとも言えない臭気。くさいの一言では言い表せない独特の臭い。

「わふっ！」

さっきまで鹿だったモノに夢中で噛みついていた例の狼さんが鹿を食べるのを終わらせたみたいで、今度は私に噛み付こうと……。しない、なんで？

「もしかしてコレくれるの？」

恐る恐る生々しいモノを指差すと食え食えと言わんばかりに吠える狼さん。でも生で肉なんて食べれない、っていうかそもそもさっきまで元気に私を殺そうとしてきた鹿さんを食べるなんて。

とりあえず背後にある小川まで逃げるか？それが1番だよね、きっと。いや、仮にそれが最適解でなくともそれしか思い浮かばない。とっさに近くにあった鋭い石を装備して、狼に背中を見せないようにだけ気を付けてじりじりと川に向かって後退する。

狼は何を考えているのか、私に向かってにじり寄ってくる。あっという間に小川にたどり着いたが、それでもなお追従をやめない狼。そこで油断したのがいけなかったのだろう。つるっつるの小石で足を滑らせた私は無様にスッ転んだ。水飛沫が上がり、何にも包まれていない私のおしりはそのままダイレクトに石にぶつかった。いや、普通に死ぬわ。裸ってこんなに危険なんか。

しかも追い討ちをかけるように狼の猛攻、ぴったりと私の首に狙いを定め口を開ける狼。嗚呼終わった、さようなら素晴らしき稀有な人生よ。

「え、あれ？」

もふもふは別に私なんか食べたくないみたいだ。その証拠に牙を突き立ててくることはなかった。逆に必死に私を水の中から引き上げようとしていた。

「あ、ありがとうございます」

とりあえず命の恩人……恩狼？である彼に土下座したらほっぺをペロペロされた。とりあえず冷静になろうか。もしかするとこの狼さんは私を保護対象、子狼とでも思っているようだ。まぁ、こんな大自然に真っ裸の人間なんて危険さの欠片もない。