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この場にいるもので仁王の想いに気付いているものは多い、ただ肝心のAはそのことを知らないどころか気付く素振りすらない。ただ、どちらにせよそれが仁王のテニスにとっての障害となるのであれば取り除くのはチームメイトの役目である。と、柳は考えているのだった。
「もし練習に差し支えるのであれば、彼女との過度な接触を無理やり禁止せざるを得ない」
まだこちらに合流しそうにないA。やきもきしながら、柳の前にズイッと身を乗り出すようにして割り込んだのは綾香だった。彼女の視線は柳に向けられている。
「ううん、Aは邪魔じゃない。むしろAが来たお蔭で仁王の練習への参加率は以前より上がってる。そのハズだけど、蓮二。私間違ったこといってる？」
「！綾香。……たしかに間違ってはいないな、つまり逆か」
ふふん、と嬉しそうにそしてどこか照れている綾香はAが戻ってきたことを確認してから左手を腰にあてて、右手で仁王くんを指差した。Aにも聞こえるように高らかと宣言する彼女。
「仁王、アンタ明日からAを迎えに行ってから練習に参加しなさい！」
「え、綾香……どうして」
綾香の意図がわからないAはこまったような顔で彼女と仁王の顔を交互に見る。
「でも、それだけだとAに何の得もないからAが1人で部活に来た場合は仁王は部活中のAへの接近禁止！」
「なん……じゃと……」
「俺もそれに賛成かな」
何故かこの世の終わりみたいな顔をしている仁王くんと楽しそうな綾香と幸村くん。私は訳がわからず、ただ呆然と彼等を見ていることしか出来なかった。
「わかったね、仁王。……ああ、如月はいつも通りで大丈夫だよ。驚かせてすまない」
小さな花を愛でるかのように慎重に、優しくAに微笑みかける幸村。その様子を不機嫌そうに見る仁王。そんな複雑な空気を読みもせずにつっこんできたのは……。
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作者名：宇治銀時 | 作成日時：2024年1月6日 23時
