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「…っえ、」
瞬間、視界が反転して、耳元でしゃらんと金具がぶつかり合う涼し気な音が響く。
掴まれた両手首は畳面に押し付けられ、簡単に自由を奪われた。
「皆の主様である君を、どうすれば自分だけのものにしてしまえるのか…」
「……は、」
なんの脈絡もないその言動に、私はただひたすら混乱した。
しかし そんな事などお構い無しに、鶴丸はふと私の肩口に顔を近づける。
「……君は俺のものだ。その身も心も、血の一滴、骨の髄に至るまで全て」
間近に迫った鶴丸が、どこか虚ろな瞳でじっとこちらを見下ろす。
私の頭が状況に追いつく前に、鶴丸の表情がころりと明るいものに変わった。
「と、いう気持ちもわからんでもないし、はたまた…」
「っ、え…、痛…っ！」
その様子にほっとしたのも束の間、息付く間もなく、今度は目元を覆われる。
かと思えば、直後に薬指に痛みが走った。
「？…、何……」
解放された視界には、楽しげに笑う鶴丸の姿と、薬指にくっきり残った歯型が見える。
「誰にも邪魔立てされない神域に連れ去らんとするのも、褒められたことではないが理解はできる」
「鶴…ん、っ」
翻弄されているかのような感覚を覚え、制止しようと口を開くものの、手のひらに口元を塞がれてしまう。
「ああ…警戒心を解くなら、外堀を埋めてしまうのも悪くは無いよなぁ」
一人で喋っては納得しているような鶴丸を止めることも出来ず、目まぐるしく変化していく状況についていけなくなってきた頃。
鶴丸は口元を押さえていた手のひらをどけて、さっと波が引くように私から離れた。
「……まぁ結局は、まともな振りをして近くに居座る奴が一番危ないかもな」
おどけたようにそう笑ってから「気をつけるといい」と目を細める鶴丸は、どこか寂しげに見えた。
「…鶴」
「どうだい、驚いたか？」
これまでに見たことの無いその様子に違和感を覚え、声をかけようとしてしたけれど、それはすぐに遮られた。
気が付くと、それまでの表情は跡形もなくなっており、かわりに悪戯が成功したとでも言いたげな悪い顔をした鶴丸が視界を占める。
「……貴方と言う人は…」
私が大きなため息をつくと、鶴丸は愉快そうに笑い声を上げる。
鶴丸はその後、何事も無かったように過ごしていたし、以降違和感を感じることも無かったけれど
「……」
鶴丸が一瞬見せた表情は、簡単に忘れられそうにはなかった。
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ぽん(プロフ) - 嵯峨野ルナさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます…！しばし離れていたジャンルですので少々浦島ですが、こんなお言葉を頂けてありがたい限りです…！ら良ければお暇なときにでも、引き続きお付き合いくださいませ (10月14日 14時) (
レス) id: 87fc64d822 (このIDを非表示/違反報告)
嵯峨野ルナ(プロフ) - 最高な作品に出会えて嬉しいです。お体に気を付けて、更新楽しみにしております！ (10月14日 10時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
嵯峨野ルナ(プロフ) - 初めまして！コメント失礼いたします。とても素敵な作品で1日に2度も繰り返し読んでしまいました。綺麗な言葉遣いでキャラクターの魅力が惹き立っていますし、夢主も私好みでキャラ達との関係も今後が非常に楽しみです！ (10月14日 10時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽん
| 作成日時：2023年10月9日 16時
