茜の蓬莱蕉 (ページ10)

今日:37 hit、昨日:26 hit、合計:7,373 hit

10. ページ10

「っひ、」

そのとき、下から聞こえてきた荒い呼吸と共に脚に何かが触れる。

思わず声を漏らしてから足元を見て、腰を抜かしそうになった。

何故か赤い頬、何故か荒い呼吸、何故か這い蹲る様に手をついた姿勢。

何事かと驚くのと同時に、眉を顰める。

「その冷たい目……イイッ」

確か、亀甲貞宗。

彼もまた、うちの本丸にはいない刀剣男士だ。

しかしまた、何とも個性的な。顕現した際に名前の由来を想像に任せると笑っていたときから、不思議だとは思っていたが。

「言ったそばから何してんの！！」

声を上げる加州清光をおいて、私はこちらを見上げる彼と目線の高さを合わせてから手を差し出す。

「私にそのように膝をつくのはお止め下さい…お手を───」

「ご主人様…っ」

しかし、彼は自らの身体を抱いてそれを拒否した。

「どうして僕にそんな対応を…まさかそういうプレイなのかい？」

「……」

一体彼をどう扱えばいいのか。

ため息をつきたくなるのを堪えながら視線を逸らすと、彼はどうしてか嬉しそうに眉を八の字にした。