茜の蓬莱蕉 (ページ9)

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大広間に通されると、昨夜顔を合わせたばかりの刀剣男士たちが待ち構えていた。

「おお、これが新しい主か」

「何だか小さいな、それに朴の花の香りがする」

「ちょっと、ぼくにもみせてください」

次々にこちらを覗き込んでくる上背のある男士たちと、その隙間を縫うようにして顔を出す短刀の男士。

見慣れているはずの面々だが、しかしやはり自分の本丸の彼らとは違うのはよくわかる。

「はいはい、見世物じゃないからねー」

加州清光は、言いながら私を背中に庇うように立ったけれど、彼らはそんなこともお構い無しに、物珍しそうな瞳で私を見ていた。

「昨日顕現したときに顔は見てると思うけど、この人は政府から派遣された審神者で…残念だけどこの本丸を立て直す間だけ審神者を兼任するって話」

だからずっとここにはいない。

そう付け加えた加州清光は、どこか声に翳りを落とした。

「そんな…僕たちの主様にはなれないということですか？」

瞳を潤ませる短刀たちの無垢な視線が刺さり、その背丈と目が合うように屈む。

「…皆様の力が安定するまでは毎日ここに伺います。その間は、どうぞ私を如何様にでもお使いください」

彼らに主として応えることはできないが、審神者としての力を振るうことはできる。

「この本丸が前と同じように戻ったら、もうここへは来て下さらないのですか？」

しかし短刀たちは私の回答には納得していない様子で食い下がった。

「あんまり困らせちゃだめだよ」

答えあぐねている私を見て、加州清光が言葉を挟む。

「この人にも帰る場所があるんだから」

短刀のうち一振りに言って聞かせるようにしてから、彼が小さく息をつく。

「…いい？こうは言ってくれてるけど、別の本丸の刀剣男士たちにとっての大事な主なんだから、くれぐれも粗相をしないように────」

「ああっ…君が僕のご主人様かい？」