茜の蓬莱蕉 (ページ6)

今日:6 hit、昨日:54 hit、合計:7,396 hit

6. ページ6

この本丸にある刀剣男士の顕現の儀を終えたのは、月が高く昇る頃だった。

さすがに霊力を使い切った私は、倒れるようにその場に膝をつく。

「ちょっと！」

咄嗟に私を支えようとする加州清光を止めて、顕現したばかりの刀剣男士たちに視線を向ける。

「…私は少し休めば大丈夫ですので、他の皆さんのことをお願いします」

長い眠りから醒めたばかりだから、色々と不自由なこともあるだろう。

それに、私では慣れていないこの本丸で彼らを助けることはできない。

「貴方にばかり負担をかけて、申し訳ないのですが…」

倒れ込みそうな程の強い目眩に身体が傾き、そのまま地面に打ち付けそうになる。

「…っと、」

最早それを防ぐ術も無くなった私の体を、加州清光が受け止めた。

「わかった…あんたの頼み事は後で聞く」

「！」

その言葉に、私の薄れかけた意識が覚醒する。

彼は驚く私を見て、くすりと小さく笑うのが見える。

言葉少なに「どうして」と尋ねると、彼は私の心の内を読み取ったかのように表情を和らげた。

「わかるよ、あんたずっと俺を通して誰かを見てる」

「加…」

「後で、って言ったでしょ」

加州清光は私の声を遮ると、軽々と抱き留めた体を抱えて立ち上がる。

「意識保ってるのもキツいでしょ。ちゃんと聞くから、今は休みな」

そう言って抱えられたまま、部屋を出て廊下を進む。

「……」

彼の言った通りぎりぎりで保っていた意識は、その体温と規則的な振動によって簡単に手放されることになった。

「……小さい身体」

「…あんた、一体何と闘ってるの」