茜の蓬莱蕉 (ページ47)

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「いやぁ見事な紅葉だなぁ？季節はとうに終わったが！」

「っだぁ〜もう、うるっさいなぁ！」

部屋中に響く陽気な笑い声に、清光が赤い頬を撫でながら噛み付く。

執務室で清光に平手打ちを炸裂させてしまったあと、見計らったかのように一文字則宗が本丸を訪ねてきた。

「何しに来たんだっての」

すっかり不機嫌に頬杖をつく清光に、申し訳なさでいっぱいになる。

まさかこんなに綺麗に手型が残るとは思っていなかった。

「あの……ごめん、痛いよね」

恐る恐る尋ねてみると、清光が慌てたように首を横に振る。

「主のせいじゃないって！俺の方こそ、嬉しくて舞い上がっちゃって…怖がらせたよね、ごめん」

言われて、反射的に「そんなことはない」と否定を挟む。

怖がっていた、とは少し違う。

「あれは…全面的に私が悪いと思う……し、」

昨日のことを思い出すと、嫌でも顔が熱くなる。

清光から距離を置いたあとすぐ、はじめてされた口付けが可愛いものに思えるほど、それは全くの別物だった。

熱くて、呼吸もままならなくて、なのに身動きまで封じられて。
その時の方が、はじめてのときよりもよっぽど恐ろしく思えてもいい状況だったのに。

「……嫌じゃ、なかった……ので…」

尻すぼみに小さくなった声に、清光は少し驚いた顔をしたあとで、かぁっと頬を赤くした。

好きにしろなんて言っておいて勝手も勝手だと、自分でも思う。これでも反省は物凄くしている。

言い訳をさせてもらえるのなら、平手打ちのつもりではなく止めようとしただけだったとだけ言っておきたい。

「っく、」

俯きがちになったとき、これまで笑いを堪えていたらしい一文字則宗がとうとう吹き出した。

「青いねぇ、こっちが恥ずかしくなってくる」

くつくつと笑う一文字則宗を、清光がきっと睨む。

と、彼は可笑しそうに喉を鳴らしながら私たちを一瞥した。