茜の蓬莱蕉 (ページ46)

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「っき……、っ」

息継ぐ間もなく、何度も角度を変えて唇が重ねられた。

そうして何度も何度も口付けが繰り返されて、呼吸もままならなくなった頃、やっと清光が少しだけ離れる。

「っは…！はぁ……、清、光…」

酸欠になりかけた朦朧とした頭で、なんとかその胸を押す。

「……ふふ、」

清光はそんな事など構わず、首筋に唇を添わせると、ゆっくりと息を吸って笑みを漏らす。

「汗の匂いがするね…」

「！や…」

その一言に羞恥を覚え、咄嗟に清光を遠ざけようとする。

けれどその手はすぐに絡め取られて、抵抗虚しく首筋を熱いものが這った。

「あっ…、！」

自分の口から漏れた高い声が自分のものとは思えず、慌てて口を押さえる。

反射的に視線を持って行った先、清光の瞳が細められた。

「…かわいー声。何で隠すの？」

「！待…」

あっという間に取り去られた手は、清光の手のひらに捕まって逃げ場を失う。

清光は私の捕まえた両腕を器用に片手で押さえつけると、空いたもう片方の手で再び帯に手を伸ばした。

「あ……清光、待って…、」

情けなく震える声を意に介すことなく、清光が手にしていた帯をぐっと引く。

その拍子に緩んだ着物の襟が気になっても、自由を失った両手は使えない。

そこから逃れようと身を捩れば、余計に着物ははだけた。

「…き、清光…だめ…、」

追い打ちをかけるように、露わになった腿に清光の手のひらが滑る。

「何がダメなの？」

じわじわと身体の中心に近付くそれに、ぎゅっと強く目を閉じた。

「わ、たし……その、まだ…っ」

好きにしろなどと言っておいて、心の準備がともいえずに、言いかけて唇を結ぶ。

どちらともわからない心臓の音と、荒い呼吸音、火傷しそうな体温と、対照的に頭を占める心地良さで、私の頭は破裂寸前になっていた。

「っや…………、」

そのとき、重なり合った清光の余裕のない赤い瞳に、私のキャパシティは限界を迎えた。

「ちょっっと待って！！！！」

おおよそそれまでの雰囲気からは想像もつかない色気のない声と共に、ばちんと大きな音がする。

パニックになっていた私はその音の出処もわからず、即座に視界を閉ざして現実逃避に走った。

腹から声を出すとはこのことだろうな、などと意味不明な思考回路を展開させながら。