茜の蓬莱蕉 (ページ41)

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もじもじと気恥しそうに目線を泳がせる秋田を見て、ふと緊張がとける。

どうやら聞かれていなかったらしい。

「本当？見せて欲しいな」

安定を逃がさないように退路を塞ぎながら、秋田に手招きをする。

しかし秋田はそわそわとした様子で、くるりと踵を返して走り出してしまった。

「ぼ、僕誰にも言いません！加州さんと主君が好い仲であることは誰にも！！」

「秋田、待…………早っ！！」

さすがの機動力ですぐに姿が見えなくなってしまう秋田に手を伸ばしても、既に後の祭り。

そしてさすが一期一振の弟。あんな可愛い体格で声がでかい。

近くで内番中だった数振りの表情を見る限り、今の声は筒抜けだったのだろう。

「ああ……」

一体どこから手をつけていけばいいのかと、額を押さえる。

そもそもどうして亀甲があんな手紙を…

「安定！！」

状況を整理し始めようとしたそのとき、秋田が出ていった方向とは逆の方向から、血相を変えた清光が現れた。

部屋の中を見渡した清光は、最後に手紙を持つ私の手元を見て、がくりと項垂れる。

「…っやられた…！」

清光は悔しげにそう漏らすと、酷く疲労した様子でため息をついた。

「何が起こってるの？」

おそるおそる尋ねてみると、清光は決まりが悪そうに後頭部をかいて、持っていた手紙を何も言わずに差し出した。

「…？読んでいいの？」

握られてくたびれた手紙は、先程清光が目を通したもの。

何も言わない清光の反応を肯定と受け取り、私は手紙に視線を落とした。

そこに記されていたのは、一文字則宗のいる本丸の日常。

それから、

『僕は元来世話焼きな方でもないが、一向に吉報のひとつもないのでいい加減矢も盾もたまらない』

「亀甲から大和守にお前たちが……いっ、好い仲になったと旨の綴った手紙を送られた頃だろう。大和守がどう動くかは想像に易いが、まぁそこは運次第とも言える」

顔が熱くなるのを感じながらそこまで読んで、続きに目を移す。

『だが、その後はお前次第だ』

「主」

ちょうど手紙を読み終えたタイミングで、清光の声が降ってくる。

顔を上げると、こちらを見下ろしている清光と目が合った。

「……ちょっと、話いい？」