茜の蓬莱蕉 (ページ5)

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私は表情が落ち込むのを隠すように言って、再度彼に一礼する。

「…何であんたがそんなこと言うの」

彼は私の対応に、少し困ったように、または可笑しそうに笑った。

その表情は、少し泣きそうなようにも見えた。

その姿が会ったばかりの日の清光と重なって、ふと緊張が解ける。

「では、御姿の顕現から」

私は一つ息をつくと、気を取り直すように手を合わせて霊力を集中させる。

「…我が霊力を糧とし、我が刃とならん」

霊力を失った刀剣の再度の顕現というのは、今までに経験がないが…やってみる他に手段はない。

「偉大なる汝の名において、今ここにその御姿を現したまえ」

詠唱を終えると同時にその刀身に触れると、私とその刀剣を包むように、吹雪のように桜が舞う。

まるでそれ自体が光を纏っているかのような花弁が眩しく目を瞑ると、地面に降り立つような音がして私はそっと目を開けた。

「─────君が、今代の主？」

頭上から降ってきた声は少し幼い、しかししっかりとした少年の声。

「…大和守安定。扱いづらいけど、いい剣のつもり」

「安定…、」

無意識なのか、彼は縺れるように踏み出した足でその傍に向かう。

「大和守安定様ですね」

私は先程この本丸の加州清光にしたように、その場に跪いた。

顕現が上手くいった。

となれば、あとは同じことの繰り返し、ここからは体力勝負だ。