茜の蓬莱蕉 (ページ40)

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安定の言葉に腰を抜かしそうな程驚いた私は、手にしていた湯呑みと急須をお盆ごとひっくり返した。

「っな……だ、…がっそんな事……！！」

驚愕のあまり最早原型を留めていない私の言葉など当然読み取れない安定が、興奮した様子で続ける。

「この前来た亀甲から文が来てて…」

「ちょ、ちょっと見せて！」

確かに安定の手には手紙らしきものがあって、私は慌ててその手紙を見せてもらった。

「……」

動揺しているからか、目で追うだけでは文章が頭に入ってこず、渋々それを声に出す。

「大和守くん、先日は出会い頭からすまなかったね。初めはどうなることかと思っていたけれど……ご主人様と加州くんが上手くいったようで…、安心…したよ……！？」

読み上げていて、頭が痛くなった。

一体彼の中で何がどうなってこんな事になっているんだ。

ぐるぐると思考が回り始めたとき、安定が安堵したような声を漏らす。

「良かったぁ…清光も主もお互い好き合ってるのに、どうして素直にならないんだって思っ」

「声が大きい！！」

声量など全く気にしていない様子の安定の声は、話の内容にはそぐわないボリュームだった。

思わず肩を掴んで揺さぶり、近くに誰もいないかと挙動不審に辺りを見回す。

「「……あっ」」

そのとき、丁度そこを通りがかったらしい秋田と目が合う。

よもや聞かれていまいかと内心はらはらしながらも、動揺を隠して笑みを乗せる。

「…秋田、どうかした？」

流れるように安定から離れ尋ねると、秋田は手に持っていた本を胸の前で抱える。

「この本に綺麗な花が載っていたので…主君に見せようと」