茜の蓬莱蕉 (ページ39)

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政府にバレないように清光たちを入れ替えて、私たちの本丸は元の姿を取り戻しつつあった。

「主〜、またあっちの俺から手紙」

私が一時的に審神者を兼任した本丸との交流は、未だに続いている。

別れの挨拶のような言葉を交わしておいて、少し気恥しさを感じているところだ。

「安定にも亀甲貞宗って奴から来てたから渡してきたけど…何の繋がり？」

「…はは、なんだろう」

怪訝そうな清光にあったことを伝えるわけにもいかず、笑って誤魔化す。

気を逸らすように開いた手紙の中身は、取り留めのない内容。

「…良かった、元気そうだよ」

ほんの一時とはいえ、彼らの主であっただけ情も湧くというもので。

彼らの何でもない日常に目を通すだけで、胸の内が綻んだ。

「……ん、清光宛の手紙が一緒になっているね」

読み終えた手紙を仕舞おうとして、その分厚さに違和感を覚えて指で摘む。

「えっ俺？」

今までは私宛しかなかったけれど…

不思議に思いながらも清光に手紙を渡すと、その眉間に皺が寄った。

「え〜…じいさんからじゃん、何だよ」

どうやら差出人は一文字則宗のようだ。

清光は手早く封を切ると、書いてある文字をするすると目で追う。

「何か個人的な用事？」

「んー…」

手紙を覗き込む訳にもいかず聞いてみると、黙読はやめないままに清光が相槌を返す。

「別に、主宛の手紙と同じ様な─────」

しかし、目線が手紙の末尾に差し掛かったであろうとき、清光がぎょっとしたような表情で言葉を詰まらせた。

そうして私が何があったのか尋ねる間もなく、手に持っていた手紙がくしゃりと潰される。

「〜〜っあんの色ボケジジイ！」

突然とんでもない罵倒を放つ清光に目を丸くしているうちに、清光がハッとした様子で部屋の外を振り返る。

「…まさか…」

清光はみるみると顔を白くすると、飛び出すようにして部屋を出ていってしまった。

「……え？」

ぽつんと部屋に取り残された私は、ひとり首を傾げる。

「近侍の仕事を頼もうと思ってたけど…」

まぁ急ぎでもないし、清光が帰ってくるまで私も休憩させて貰おう。

「主！！清光と恋仲になったって本当！！？」

そう思って呑気にお茶の用意を始めていた私は、横滑りするように勢いよく部屋の前に現れた安定に度肝を抜かれることになる。