茜の蓬莱蕉 (ページ35)

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喧嘩でも始まりそうな勢いに、私は慌てて間に入ろうとした。

けれど亀甲はそんな私を制止して、安定に向き直った。

「何の話をしているかと思えば、君は一体ご主人様の何を見ているんだい」

「……はぁ？」

安定の額に、青筋が浮かぶ。

その手が鯉口を切ったのを見て、私の全身から血の気が引いた。

彼らは美麗な姿をしている者が多いから忘れがちだが、そもそも刀の付喪神。

血の気が多いのは仕方ないが…それにしても少々短気ではなかろうか。

「落ち着い─────」

「ご主人様もどうして黙っているんだい？鈍感な彼に教えてあげればいい、加州清光を愛していると」

亀甲から放たれたその言葉を飲み込むのに、どれだけ時間がかかっただろう。

「……えっ何？」

それでも私の口からやっと出てきたのは、そんな意味の無い言葉だった。

けれど、それは私の心の底からの本心だった。

彼の言っていることが、どう考えても理解できなかったのだ。

安定の方を見てみても、彼もまた私と同じように困惑しているようだった。

お互いが首を傾げていると、やがて亀甲が何かに気がついたようにげんなりとした表情を見せる。

「この主にしてこの臣あり…か」

亀甲は困ったように目を伏せると、転じてきっと眉を吊り上げる。