茜の蓬莱蕉 (ページ31)

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つらつらと話を続ける私に、彼が眉を寄せてヤケのように答える。

「あぁそうだな。だがそれは寿命の前借りに過ぎん、自ら命を削る行為だ」

「その通り」

不機嫌そうな彼に頷く。

「ですので、私の生涯分の霊力を彼らに遺していくつもりです」

そうすれば、私が今後生きたであろう数十年は、彼らは主なしに生きていくことができる。

私の言う力の献上は、政府というよりも刀剣男士たちに宛てたもの。もちろんこれは政府に伏せるが。

「事実人身御供と変わらない名ばかりの力の献上よりも、余程実のあるものでしょう？」

力の献上の際には、政府に対して補償を求めることが出来る。

これは、その名のもとに行われる非人道的な行為に対する反発を防ぐ目的として設けられている制度で、政府はその者の要望を必ず聞き届けなければならない。

今までに審神者の就任を拒否した者たちの多くは、家族の安全と生活の補償を望んでいった。

私ももちろんその補償制度を利用する。

「政府に要求するのはふたつ。ひとつは清光を解放すること…今回の処分が私という存在があるために生じた問題である以上、これは私がいなくなることで容易に受諾されるでしょう」

そして、もうひとつ。

「もうひとつは、十年以内に新たな審神者を二名確保し、私の指定する本丸に配置すること」

「！」

私の言葉を聞いた一文字則宗は、その目を大きく見開いた。

「……本気なのか」

その顔が俯きがちになったことで、彼の淡い色の髪に隠れた表情が見えなくなる。

私はその本心を知る術もなく、短く答えた。

「冗談を言える余裕などありません」

臆面もなく答える私に、一文字則宗は面食らった。

「…年端もいかぬ娘にこうも覚悟を見せつけられるとは、情けない話だな」

困ったように笑った一文字則宗は、まるで小さな子供でも見るような柔らかな視線で私を捉える。

年端もいかぬという年齢ではないと思うが…まぁ彼からすれば私も赤子同然なのだろう。

「よし、お前さんの覚悟はよくわかった。僕からもふたつ贈り物をやろう」

これをどう扱うかはお前さん次第だと言って、彼は私に、清光の処分を延期させるよう政府のとある刀剣男士に指示を出したと教えてくれた。