茜の蓬莱蕉 (ページ28)

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腕の中で驚きを隠せないでいる加州に構わず、より強くその身体を抱きしめる。

「これは最後じゃない。必ず迎えに来る」

そこまで言って身体を少し離して、その頬に触れる。

ここからの言葉は、清光ではない彼に届くように、じっと視線を重ね合わせた。

「……貴方も既に、私の大事な刀剣男士」

「！」

その表情の小さな変化は、私の言葉の意味を理解したからなのか、他に理由があるのかはわからない。

「だから、信じて待っていて欲し…っ」

彼は離れていく私の身体を捕まえて引き寄せると、抱え込むように私の頭と腰に回した手に力を込めた。

「待つよ、いくらでも」

そうして、ふと耳元に顔を寄せる。

「…情熱的。今のはどっちに言ってくれたの？」

私にだけ聞こえるかどうかの声量でそう言うと、管狐からは死角となっている範囲で小さく笑う。

「…ありがとね」

加州は最早囁き声とも言える小さな声で言って、私の輪郭をするりと指の背で撫でた。

「これ以上はそっちの俺が芝居打てなくなりそうだから、この辺にしとくよ」

彼は私の反応を待たず、それを最後に一歩後ろに下がった。

「はいはい、もういいでしょ？」

示し合わせたかのように、淡々とした声色の清光が呆れ交じりな声を上げる。

「では、お送り致します」

どこか苛立っている様子の清光が管狐に視線を投げると、狐は落ち着けていた腰を上げて出口の方へと向かった。